というわけで、100回ほど死んでもらった。
 うん、満足したよ。
 愛沢にはああ言ったけど、さすがにもういいかな。

「……ふぅ」

 眠らせた愛沢を乗せた陸戦鉄神M9で、魔の森を抜けた。
 見えてきたのは、すっかりボロボロになってしまったバルルワ村。

「こりゃ復興大変だぞ。やってくれたな愛沢」

 愛沢――いや、コボル男爵のことは、ゲルマニウム王国の司法にお任せする。
 まぁ死刑は免れないだろうけど、内乱煽って亡命したんだからさすがに当然の報いだろう。
 コイツのことは、これでおしまい。
 私は前世のことを忘れて、カナリア君や領のみんなと一緒に生きていく。
 あ、帝国のことも考えなきゃ。

「やることが、やることが多い!」

 村に入ると、村人の皆さんが出迎えてくれた。
 温泉郷で働いている人たちもいる。
 ヴァルキリエさんやクローネさんを始めとした元奥さんたちも。
 バルルワ村、勢ぞろいだ。
 だが、カナリア君だけは姿が見えない。

 私は鉄神のハッチを開き、手を振りながら凱旋する。
 みんな笑顔だ。
 不安は取り除けたと考えていいだろう。

 M9を格納庫に収め、クゥン君に愛沢を下ろしてもらう。
 女神邸に入ると、爽やかなハーブティーの香りがした。

「お姉ちゃん」

 片づけられた居間で、カナリア君がお茶を用意して待っていてくれた。
 温泉卵と、ヤギミルクのアイスクリームもある。

「お疲れ様、お姉ちゃん」

 私はソファに座り、カナリア君を抱きしめる。
 カナリア君の、温泉の香りが鼻腔をくすぐる。

「疲れたよ」

「お姉ちゃん、大丈夫?」

「大丈夫だよ」

「だけど、震えてる」

「大丈夫。ちょっと疲れちゃっただけなんだ」

「そっか」

 カナリア君が、私の頭を撫でてくれる。

「あ、いい。それすごくいい。安心する」

「少し、眠るといいよ」

 カナリア君が、私の頭を撫でてくれる。

「お姉ちゃんが起きるまで、こうしていてあげるから」

 カナリア君が、私の頭を撫でてくれる。
 私は、目を閉じた。

















 ……

 …………

 ………………

 ……………………

 ――ブーッ、ブーッ、ブーッ

 ポケットの中で、帝国でもらった携帯端末が震えている。

「あーもう」私は目を開ける。「せっかく今、いいとこだったのに」

 何というか、私って締まらないなぁ。

「もしもし」

『陛下!』

 キッシュ君だ。
 ものすごく慌ててる。

『シン帝国が、再び総攻撃を仕掛けてきました! 支えきれません!』

「早くない!?」