【Side 元・辺境伯】
「ははっ、あははっ、あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!」
僕は今、M4などと呼ばれているロボットに乗って、魔の森を走っている。
バルルワ村での蜂起は上手くいった。
愚かな連中だ。精神が可哀そうなほど脆く、簡単に洗脳される。
面白半分だったが、まさかたったの1ヵ月で、『友愛教』の信者が1,000人を超えるとは思わなかった。
共感者も含めれば、もっといるかもしれない。
「ぬるい。ぬるすぎる。まぁ、識字率も低い世界では、こんなものか」
道中、何度か魔物と遭遇したが、M4が自動戦闘で圧倒してくれた。
「こんな、この程度の簡単なコマンドも打てないとは、バルルワ村の犬どもの脳ミソは本当に犬並みだな」
まぁ僕も、総務部部長として情報システム課を兼務していた経験があり、多少の馴染みがあったからM4を起動させることができたのだが。
とはいえ仕事は全て■■ちゃんを始めとした有能な奴隷にやらせていたから、プログラミングを覚える機会はついぞ訪れなかったが。
「そう考えると、エクセルシアの中身は、やはり転生者か? 案外、自殺することで結果的に僕を殺した、朝子ちゃん辺りが入っているのかもしれないな」
まぁ何にせよ、エクセルシアが支配するバルルワ = フォートロン辺境伯領はもうおしまいだ。
モンティ・パイソン帝国に拉致されたらしいが、必死に戻ってきたとしても、迎えてくれるのは荒廃し切った領土。
「どんな顔をしてくれるだろうなぁ」
一方の僕は、実効支配したバルルワ温泉郷を手土産に、帝国へ亡命する。
上手くすれば、バルルワ温泉郷伯の地位を得られるかもしれない。
温泉郷の地下には膨大な量の兵器が眠っているという話だから、フォートロン辺境伯領と、その先にいるゲルマニウム王国を圧倒するのも容易だろう。
魔の森を抜けた。
ぱっと広がった視界の先では、数十機のロボットと数十両の装甲車が停まっていている。
コンクリート製の大きなビルが1つだけ立っており、ビルと兵器がフェンスで守られている。
形ばかりの国境警備隊といったところか。
「おーい、話を聞いてください!」
僕は巨大な白い布――白旗を掲げながら、ゆっくりとビルに近づく。
ビルの中から将兵らしき人影が何人も出てきたので、ロボットをひざまずかせて両手を掲げさせた。
◇ ◆ ◇ ◆
幸いなことに、その若造――猫の耳とオッドアイを持った若き将校は、ゲルマニウム王国語が片言ながら話せるようだった。
「貴方、とても、運、いい」ビルの中を先導しながら、若造が言う。「ちょうど、今日、皇帝、ここ、いる。直接、話す、できる」
まるで生前の日本を思わせる、先進的な造りの建屋内を歩くことしばし。
やがて、大きな扉の前についた。
「ここ、司令官の部屋」
扉が開かれる。
奥の机に着いているのは――女?
窓を背負っており、逆光になって顔がよく見えない。
「わたくし、ゲルマニウム王国において魔の森近縁を治めておりますコボルと申します」
僕は揉み手で頭を下げる。
「魔の森近縁の土地を皇帝陛下に差し上げますので、このわたくしめを帝国臣民の栄誉にあずからせてはいただけませんか?」
「これはこれは、ご丁寧に」
……何やら、聞き覚えのある声だった。
「私、第14第皇帝を務めます、エクセルシア = ビジュアルベーシック = フォン = バルルワ = フォートロン = ト = ブ = モンティ・パイソンと申します」
軍服姿のエクセルシアが立ち上がり、優雅に礼をした。
「死ぬほどお会いしたかったですわ、愛沢部長」
「ははっ、あははっ、あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!」
僕は今、M4などと呼ばれているロボットに乗って、魔の森を走っている。
バルルワ村での蜂起は上手くいった。
愚かな連中だ。精神が可哀そうなほど脆く、簡単に洗脳される。
面白半分だったが、まさかたったの1ヵ月で、『友愛教』の信者が1,000人を超えるとは思わなかった。
共感者も含めれば、もっといるかもしれない。
「ぬるい。ぬるすぎる。まぁ、識字率も低い世界では、こんなものか」
道中、何度か魔物と遭遇したが、M4が自動戦闘で圧倒してくれた。
「こんな、この程度の簡単なコマンドも打てないとは、バルルワ村の犬どもの脳ミソは本当に犬並みだな」
まぁ僕も、総務部部長として情報システム課を兼務していた経験があり、多少の馴染みがあったからM4を起動させることができたのだが。
とはいえ仕事は全て■■ちゃんを始めとした有能な奴隷にやらせていたから、プログラミングを覚える機会はついぞ訪れなかったが。
「そう考えると、エクセルシアの中身は、やはり転生者か? 案外、自殺することで結果的に僕を殺した、朝子ちゃん辺りが入っているのかもしれないな」
まぁ何にせよ、エクセルシアが支配するバルルワ = フォートロン辺境伯領はもうおしまいだ。
モンティ・パイソン帝国に拉致されたらしいが、必死に戻ってきたとしても、迎えてくれるのは荒廃し切った領土。
「どんな顔をしてくれるだろうなぁ」
一方の僕は、実効支配したバルルワ温泉郷を手土産に、帝国へ亡命する。
上手くすれば、バルルワ温泉郷伯の地位を得られるかもしれない。
温泉郷の地下には膨大な量の兵器が眠っているという話だから、フォートロン辺境伯領と、その先にいるゲルマニウム王国を圧倒するのも容易だろう。
魔の森を抜けた。
ぱっと広がった視界の先では、数十機のロボットと数十両の装甲車が停まっていている。
コンクリート製の大きなビルが1つだけ立っており、ビルと兵器がフェンスで守られている。
形ばかりの国境警備隊といったところか。
「おーい、話を聞いてください!」
僕は巨大な白い布――白旗を掲げながら、ゆっくりとビルに近づく。
ビルの中から将兵らしき人影が何人も出てきたので、ロボットをひざまずかせて両手を掲げさせた。
◇ ◆ ◇ ◆
幸いなことに、その若造――猫の耳とオッドアイを持った若き将校は、ゲルマニウム王国語が片言ながら話せるようだった。
「貴方、とても、運、いい」ビルの中を先導しながら、若造が言う。「ちょうど、今日、皇帝、ここ、いる。直接、話す、できる」
まるで生前の日本を思わせる、先進的な造りの建屋内を歩くことしばし。
やがて、大きな扉の前についた。
「ここ、司令官の部屋」
扉が開かれる。
奥の机に着いているのは――女?
窓を背負っており、逆光になって顔がよく見えない。
「わたくし、ゲルマニウム王国において魔の森近縁を治めておりますコボルと申します」
僕は揉み手で頭を下げる。
「魔の森近縁の土地を皇帝陛下に差し上げますので、このわたくしめを帝国臣民の栄誉にあずからせてはいただけませんか?」
「これはこれは、ご丁寧に」
……何やら、聞き覚えのある声だった。
「私、第14第皇帝を務めます、エクセルシア = ビジュアルベーシック = フォン = バルルワ = フォートロン = ト = ブ = モンティ・パイソンと申します」
軍服姿のエクセルシアが立ち上がり、優雅に礼をした。
「死ぬほどお会いしたかったですわ、愛沢部長」