『お姉ちゃん!!』
目の前に、鉄神2号が滑り込んできた!
――ガギャァアーーーーンッ!
激しい金属音とともに、鉄神2号が地龍の爪を受け止めた。
圧倒的体格差を物ともせず、巧みな操作で爪を押し返す。
「……カナリア君?」
来て、くれたの?
「女神様!」
「クゥン君も!」
「さ、つかまってください」
クゥン君が私を抱き上げ、ぴょんぴょんとロボットの上に上っていく。
「さぁ、女神様」
クゥン君が、私を操縦席にそっと座らせてくれた。
そのころには、私の手指も多少は動くようになっていた。
鉄神の倍――10メートル以上はありそうなロボット。
その中は、おおむね鉄神と同じ構造をしていた。
私はキーボードを引き寄せ、震える指で、
『r』
『u』
『n』
エンター。
コンソール画面に、ずらずらっと無数の文字列が表示されていく。
外からは、カナリア君が地龍と戦う激しい音が聞こえてくる。
早く動いて! お願い!
『All ready.』
『陸戦四二型 S/N:M4-2G0001起動』
『IFF起動。戦闘起動中のL1-1G0002を友軍機と認めます』
『本機及び友軍機を攻撃中の敵性生物の排除について許可を求めます。是(y) / 非(n)』
私は『y』と入力してエンター。
とたん、左腰辺りから『がちゃり』と音がして、ロボット――『陸戦四二型:M4』が右手でナイフを取り出す。
「カナリア君、離れて!」
私の言葉と同時、カナリア君が地龍から離れる。
とたん、ナイフがチェーンソーのように激しく回転を始めた。
ロボットが跳躍し、ナイフを地龍の額に突き刺した!
いや、地龍が発生させた光の盾――防御結界によって阻まれる。
が、ナイフの柄に魔法陣が生じた。その魔法陣が光の盾を包み込む。
光の盾が消失し、ナイフが地龍の額に潜り込んだ!
いや、間一髪で地龍が首をひねった。
ナイフは地龍の右目に深く深く潜り込んでいく。
『グギャァアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!』
地龍の、苦悶の叫び。
今度はロボットの右腰辺りから『がちゃり』という音。
ナイフで地龍を固定したまま、ロボットが取り出したのは――
「拳銃!?」
ロボットが、苦悶の叫びを上げ続ける地龍の口内に拳銃を突っ込んだ。
――ズガンッ!
地龍がびくりと震えた後、動かなくなった。
――ズガンッ!
――ズガンッ!
ロボットが、さらに頭部へダメ押しの2発。
『対象の絶命を確認。自動戦闘モードを終了します』
たった10秒ほどの出来事だった。
私たちは、生き残ったのだ。
私は、震えながら振り向く。
「女神様!」
クゥン君が晴れやかに微笑んでいる。
私はクゥン君を抱きしめる。
体の震えが止まらない。
「女神様、よくぞご無事で」
「お姉ちゃん!」
ハッチを開くと、カナリア君が転がり込んできた。
私は、カナリア君も抱きしめる。
あ、あはは……両手に花だ。
ショタっ子サイコー!\\٩( 'ω' )و ////
「お姉ちゃん? どこか痛いの?」
「そんなんじゃないよ」
「じゃあ、何で泣いてるの?」
「嬉しいからだよ。カナリア君が、クゥン君が、村の人たちが、私が。みんなが生きているのが嬉しいから、泣いているんだ」
「そっか」カナリア君が微笑む。
「女神様」クゥン君が、恐る恐る私の頭を撫でてきた。「こんな言い方は不遜かもしれませんが……お疲れさまでした。後のことはオレたちにお任せください」
私は目を閉じる。
そこから先の記憶はない。
◇ ◆ ◇ ◆
数日後。
「可憐にして勇猛なるドラゴンスレイヤー! エクセルシア = ビジュアルベーシック = フォン = バルルワ = フォートロンよ!」
なぜか私は、辺境伯領都フォートロンブルグの中央広場で、国王陛下の前でひざまずいている。
国王陛下が、抜身の剣を私の肩に当てて、
「そなたを、バルルワ = フォートロン辺境伯に封ず!」
「「「「「わぁあ~~~~っ!!」」」」」
広場からは、割れんばかりの歓声。
人間、獣人を問わず、領都に住むありとあらゆる老若男女が、私を賞賛する。
「地龍殺しの英雄様~!」
「女神様ぁ~!」
「温泉神様!」
「エクセル神様~!」
「鉄神の主様!」
そうして広間の片隅では、私から爵位と領土を奪われ、今や領地無し男爵にまで落ちぶれてしまったクーソクソクソ愛沢部長もといコボル男爵が、私を射殺しそうな目で睨みつけている。
どうしてこうなった!?
◇ ◆ ◇ ◆
さかのぼること、数日前。
私たちが地龍シャイターンを討伐した、その翌日のこと。
「そなたの褒美の話だ」
自室で目を覚ました私の元に国王陛下が訪れ、開口一番そう言った。
「あ、あの、王太子殿下は大丈夫ですか?」
「あやつの体のことなら大丈夫だ。ただ、いつまで経ってもそなたが目を覚まさぬことを心配しておったがな」
窓の外、太陽の位置は高い。丸一日、私は寝っていたらしい。
「あっ、大変失礼を。陛下のお話を遮るだなんて」
「よいよい。それで、地龍シャイターン討伐の褒美として、何が欲しい?」
「そんな、急にそのようなことを仰られましても」
「こちらで用意した案としては、
1、カナリアの正室
2、ゲルマニウム王国の将軍職
3、フォートロン辺境伯の領地と爵位
4、一生遊んで暮らせるだけの報奨金
5、上記全部」
「ぶっふぉ」
「まぁ4番については、余が下賜せずとも、そなたはもはや王国一の金持ちだがな」
「ど、どどどどういうことですか!?」
「そなた、Sランクモンスター・ミニドラゴンのウロコ1枚が、どのくらいの価格で取り引きされているのか知らぬのか?」
「寡聞にして……すみません」
「1000ゴールドだ」
「せんっ!?」
1000ゴールドといえば、世界観や物価の違いを無視して無理やり現代の日本円に換算すれば、およそ10万円。ウロコ1枚で、10万円。
「全国で、探せばそれなりに見つけられるミニドラゴンで、その価格。ならば、世界に4柱しかいないと言われている伝説の龍のウロコは? 爪は? 牙は? 血は? 肉は?」
「地龍シャイターン、私がいただいてしまってもよろしいのですか?」
「そなたが討伐したのだからな」
「いや……あれは私というより、王太子殿下やヴァルキリエさんや、領軍や村人さんたちが倒したようなものでして。私は穴掘ってただけですから」
「はっはっはっ。ヴァルキリエから聞いておったが、ずいぶんと謙虚な英雄だ。だが、そんなそなたのもとにカナリアが、ヴァルキリエが、領軍が、バルルワ村の者たちが集い、力を合わせて地龍を倒したのだろう? ならばやはり、シャイターンを討伐したのはそなただな」
「そういうものですか」
「そういうものだ。それで、余からの提案については考えてくれるかな?」
「ええと、今お返事しなきゃいけませんでしょうか?」
「この国の、明日からの形を決める重要事項だからな。王都では、大臣どもが首を長くして待っておる。早々に方針を決めて、持ち帰ってやりたいのだ」
……ふむ、そうか。
考えてもみれば、『伝説のSSSランクモンスター』だとか『国を平らげる災厄』だとか言われていた存在を、私は――というか私が搭乗した鉄神M4は瞬殺してしまったのだ。
そんな超やばい級存在となってしまった私をどのようにコントロールするのか、というのが、今のゲルマニウム王国にとっては真っ先に議論すべき事項なのだろう。
「それでは……1つ目、王太子殿下の正室というのは大変な名誉であり、私個人としてもとても嬉しいのですが、少しお時間をください」
相手はまだ5歳。
5歳で将来の相手を決められちゃうのは酷じゃない?
それも、10歳近く年上の女が相手だなんて。
もう少し、カナリアくんといろんなことをお喋りしたい。
喋ったうえで、それでもカナリア君が私のことを好いてくれているなら、このお話、前向きに考えたい。
貴族家令嬢としては贅沢な考えなのかもしれないけど……。
それに。
それにだ。
本当に私がカナリア君とお付き合いして、結婚して、こっ、子作りする関係になった場合、やっぱりカナリア君には『例のこと』を正直に話しておきたい。
そう。
『転生者が、転生の事実を周囲の人に告白するべきかどうか問題』
というやつだ。
さすがに20歳も年上のオバサンだと知ったら、カナリア君も私に幻滅してしまうのではないだろうか……それが、怖い。
だから私は、この件を先送りにしたい。
「2つ目の将軍職は、申し訳ありません、ご勘弁ください」
「むぅ。この国にそなた以上の強者などおらんのだが」
「軍を率いるなんて私には無理すぎます。それに、強いのは私ではなくてM4ちゃんです」
「えむふぉー?」
「地龍シャイターンを瞬殺した、陸戦タイプの鉄神のことです。あと、鉄神の操縦って意外と簡単なんですよ」
「む、そうなのか?」
「カナリア君――失礼しました。王太子殿下が私よりも上手に操縦なさっておいででしょう?」
「ふむ。それもそうか」
「あの地下にはまだたくさんの鉄神や戦車が置いてありましたから、王都に持っていって国軍に操縦を学んでいただいてはいかがでしょうか」
「貸してもらえるのか?」
「え、私の物なんですか?」
「そりゃあ、そなたの領地から発掘されたものなのだから」
「そういうものですか。それで、3番目ですが――」
3、フォートロン辺境伯の領地と爵位
「願ってもいないお話ですが、可能なのですか?」
「可能だ。もし彼奴めが抵抗するようならば……ごにょごにょ」
「おおおっ!? ならばこういうのは……ごにょごにょ」
「あっはっはっ! そなたもワルよのう!」
目の前に、鉄神2号が滑り込んできた!
――ガギャァアーーーーンッ!
激しい金属音とともに、鉄神2号が地龍の爪を受け止めた。
圧倒的体格差を物ともせず、巧みな操作で爪を押し返す。
「……カナリア君?」
来て、くれたの?
「女神様!」
「クゥン君も!」
「さ、つかまってください」
クゥン君が私を抱き上げ、ぴょんぴょんとロボットの上に上っていく。
「さぁ、女神様」
クゥン君が、私を操縦席にそっと座らせてくれた。
そのころには、私の手指も多少は動くようになっていた。
鉄神の倍――10メートル以上はありそうなロボット。
その中は、おおむね鉄神と同じ構造をしていた。
私はキーボードを引き寄せ、震える指で、
『r』
『u』
『n』
エンター。
コンソール画面に、ずらずらっと無数の文字列が表示されていく。
外からは、カナリア君が地龍と戦う激しい音が聞こえてくる。
早く動いて! お願い!
『All ready.』
『陸戦四二型 S/N:M4-2G0001起動』
『IFF起動。戦闘起動中のL1-1G0002を友軍機と認めます』
『本機及び友軍機を攻撃中の敵性生物の排除について許可を求めます。是(y) / 非(n)』
私は『y』と入力してエンター。
とたん、左腰辺りから『がちゃり』と音がして、ロボット――『陸戦四二型:M4』が右手でナイフを取り出す。
「カナリア君、離れて!」
私の言葉と同時、カナリア君が地龍から離れる。
とたん、ナイフがチェーンソーのように激しく回転を始めた。
ロボットが跳躍し、ナイフを地龍の額に突き刺した!
いや、地龍が発生させた光の盾――防御結界によって阻まれる。
が、ナイフの柄に魔法陣が生じた。その魔法陣が光の盾を包み込む。
光の盾が消失し、ナイフが地龍の額に潜り込んだ!
いや、間一髪で地龍が首をひねった。
ナイフは地龍の右目に深く深く潜り込んでいく。
『グギャァアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!』
地龍の、苦悶の叫び。
今度はロボットの右腰辺りから『がちゃり』という音。
ナイフで地龍を固定したまま、ロボットが取り出したのは――
「拳銃!?」
ロボットが、苦悶の叫びを上げ続ける地龍の口内に拳銃を突っ込んだ。
――ズガンッ!
地龍がびくりと震えた後、動かなくなった。
――ズガンッ!
――ズガンッ!
ロボットが、さらに頭部へダメ押しの2発。
『対象の絶命を確認。自動戦闘モードを終了します』
たった10秒ほどの出来事だった。
私たちは、生き残ったのだ。
私は、震えながら振り向く。
「女神様!」
クゥン君が晴れやかに微笑んでいる。
私はクゥン君を抱きしめる。
体の震えが止まらない。
「女神様、よくぞご無事で」
「お姉ちゃん!」
ハッチを開くと、カナリア君が転がり込んできた。
私は、カナリア君も抱きしめる。
あ、あはは……両手に花だ。
ショタっ子サイコー!\\٩( 'ω' )و ////
「お姉ちゃん? どこか痛いの?」
「そんなんじゃないよ」
「じゃあ、何で泣いてるの?」
「嬉しいからだよ。カナリア君が、クゥン君が、村の人たちが、私が。みんなが生きているのが嬉しいから、泣いているんだ」
「そっか」カナリア君が微笑む。
「女神様」クゥン君が、恐る恐る私の頭を撫でてきた。「こんな言い方は不遜かもしれませんが……お疲れさまでした。後のことはオレたちにお任せください」
私は目を閉じる。
そこから先の記憶はない。
◇ ◆ ◇ ◆
数日後。
「可憐にして勇猛なるドラゴンスレイヤー! エクセルシア = ビジュアルベーシック = フォン = バルルワ = フォートロンよ!」
なぜか私は、辺境伯領都フォートロンブルグの中央広場で、国王陛下の前でひざまずいている。
国王陛下が、抜身の剣を私の肩に当てて、
「そなたを、バルルワ = フォートロン辺境伯に封ず!」
「「「「「わぁあ~~~~っ!!」」」」」
広場からは、割れんばかりの歓声。
人間、獣人を問わず、領都に住むありとあらゆる老若男女が、私を賞賛する。
「地龍殺しの英雄様~!」
「女神様ぁ~!」
「温泉神様!」
「エクセル神様~!」
「鉄神の主様!」
そうして広間の片隅では、私から爵位と領土を奪われ、今や領地無し男爵にまで落ちぶれてしまったクーソクソクソ愛沢部長もといコボル男爵が、私を射殺しそうな目で睨みつけている。
どうしてこうなった!?
◇ ◆ ◇ ◆
さかのぼること、数日前。
私たちが地龍シャイターンを討伐した、その翌日のこと。
「そなたの褒美の話だ」
自室で目を覚ました私の元に国王陛下が訪れ、開口一番そう言った。
「あ、あの、王太子殿下は大丈夫ですか?」
「あやつの体のことなら大丈夫だ。ただ、いつまで経ってもそなたが目を覚まさぬことを心配しておったがな」
窓の外、太陽の位置は高い。丸一日、私は寝っていたらしい。
「あっ、大変失礼を。陛下のお話を遮るだなんて」
「よいよい。それで、地龍シャイターン討伐の褒美として、何が欲しい?」
「そんな、急にそのようなことを仰られましても」
「こちらで用意した案としては、
1、カナリアの正室
2、ゲルマニウム王国の将軍職
3、フォートロン辺境伯の領地と爵位
4、一生遊んで暮らせるだけの報奨金
5、上記全部」
「ぶっふぉ」
「まぁ4番については、余が下賜せずとも、そなたはもはや王国一の金持ちだがな」
「ど、どどどどういうことですか!?」
「そなた、Sランクモンスター・ミニドラゴンのウロコ1枚が、どのくらいの価格で取り引きされているのか知らぬのか?」
「寡聞にして……すみません」
「1000ゴールドだ」
「せんっ!?」
1000ゴールドといえば、世界観や物価の違いを無視して無理やり現代の日本円に換算すれば、およそ10万円。ウロコ1枚で、10万円。
「全国で、探せばそれなりに見つけられるミニドラゴンで、その価格。ならば、世界に4柱しかいないと言われている伝説の龍のウロコは? 爪は? 牙は? 血は? 肉は?」
「地龍シャイターン、私がいただいてしまってもよろしいのですか?」
「そなたが討伐したのだからな」
「いや……あれは私というより、王太子殿下やヴァルキリエさんや、領軍や村人さんたちが倒したようなものでして。私は穴掘ってただけですから」
「はっはっはっ。ヴァルキリエから聞いておったが、ずいぶんと謙虚な英雄だ。だが、そんなそなたのもとにカナリアが、ヴァルキリエが、領軍が、バルルワ村の者たちが集い、力を合わせて地龍を倒したのだろう? ならばやはり、シャイターンを討伐したのはそなただな」
「そういうものですか」
「そういうものだ。それで、余からの提案については考えてくれるかな?」
「ええと、今お返事しなきゃいけませんでしょうか?」
「この国の、明日からの形を決める重要事項だからな。王都では、大臣どもが首を長くして待っておる。早々に方針を決めて、持ち帰ってやりたいのだ」
……ふむ、そうか。
考えてもみれば、『伝説のSSSランクモンスター』だとか『国を平らげる災厄』だとか言われていた存在を、私は――というか私が搭乗した鉄神M4は瞬殺してしまったのだ。
そんな超やばい級存在となってしまった私をどのようにコントロールするのか、というのが、今のゲルマニウム王国にとっては真っ先に議論すべき事項なのだろう。
「それでは……1つ目、王太子殿下の正室というのは大変な名誉であり、私個人としてもとても嬉しいのですが、少しお時間をください」
相手はまだ5歳。
5歳で将来の相手を決められちゃうのは酷じゃない?
それも、10歳近く年上の女が相手だなんて。
もう少し、カナリアくんといろんなことをお喋りしたい。
喋ったうえで、それでもカナリア君が私のことを好いてくれているなら、このお話、前向きに考えたい。
貴族家令嬢としては贅沢な考えなのかもしれないけど……。
それに。
それにだ。
本当に私がカナリア君とお付き合いして、結婚して、こっ、子作りする関係になった場合、やっぱりカナリア君には『例のこと』を正直に話しておきたい。
そう。
『転生者が、転生の事実を周囲の人に告白するべきかどうか問題』
というやつだ。
さすがに20歳も年上のオバサンだと知ったら、カナリア君も私に幻滅してしまうのではないだろうか……それが、怖い。
だから私は、この件を先送りにしたい。
「2つ目の将軍職は、申し訳ありません、ご勘弁ください」
「むぅ。この国にそなた以上の強者などおらんのだが」
「軍を率いるなんて私には無理すぎます。それに、強いのは私ではなくてM4ちゃんです」
「えむふぉー?」
「地龍シャイターンを瞬殺した、陸戦タイプの鉄神のことです。あと、鉄神の操縦って意外と簡単なんですよ」
「む、そうなのか?」
「カナリア君――失礼しました。王太子殿下が私よりも上手に操縦なさっておいででしょう?」
「ふむ。それもそうか」
「あの地下にはまだたくさんの鉄神や戦車が置いてありましたから、王都に持っていって国軍に操縦を学んでいただいてはいかがでしょうか」
「貸してもらえるのか?」
「え、私の物なんですか?」
「そりゃあ、そなたの領地から発掘されたものなのだから」
「そういうものですか。それで、3番目ですが――」
3、フォートロン辺境伯の領地と爵位
「願ってもいないお話ですが、可能なのですか?」
「可能だ。もし彼奴めが抵抗するようならば……ごにょごにょ」
「おおおっ!? ならばこういうのは……ごにょごにょ」
「あっはっはっ! そなたもワルよのう!」