「先生はあくまで保健室の先生。だから一人の生徒の詳しい説明はできないの。プライバシーは守らなきゃだし。そういうことで、図書室登校をすすめたのも後悔している」

 苦虫を噛み潰すみたいに歯をくいしばって丘先生は吐き捨てた。
 
「私が……何をしたって、言うんですか?」
「それぐらい、自分の記憶に聞きなさい」

 心も友人関係も先生との信頼関係も一気に狂った。スクランブルエッグみたいに黄身とか白身とか関係ないくらいにぐちゃぐちゃになった。

 そのあとはもう、ただひたすら泣くしかなかった。もどかしくて、どうしようもない気持ちが頭の中でぐるぐると渦を巻いていた。

 家に帰ってスマホを見てみる。そこにはまだ柚香ちゃんと櫂冬くんの連絡先があった。でもブロックされていたり、なんか送っても返信はおろか、見てもくれないのだろう。その現実を突きつけられるのが怖くて、スマホの電源を落とした。

「はーっ」

 無意識にため息がもれ、電気もつけずにベッドの上で膝を抱えてうずくまる。一応起き上がったり、壁に手を当てて歩くことはできる。なんか小さい子どもに戻ったような、いや、違う。年は若いのにおばあちゃんになっちゃったみたいな感じだ。動きにくくて痛みがひどいせいか、意識は時折虚ろになる。

 なんて惨めなんだ、私は。誰からも嫌われるとか。自己嫌悪は募りをますます深めていく。それでもなんでこうなってしまったのかはわからない。
 その現実に涙が止まらない。コップにヒビでも入って、そこから溢れ出しているような感じだ。
 
 運命を信じていたなんて、バカみたいな私がどこかにいたのだろうか。浮かれている自分がいたのだろうか。だから裏切られたのか。

 そう思ったら苛立った。私は運命なんて信じてないはずだから。なんで知らぬ間にこうなっているんだって。

 泣き崩れているとキィーと扉が開き、パチリと電気がつけられる。