イケメンは学ランのポケットからメモ帳とシャーペンを取り出し、何かを書き込む。ヘッドフォンのようなものを外そうともせず、小さな口を開こうともしない。
「あの……どうされましたか?」
不審に思い、声をかけてみる。
イケメンは肩をピクリと震わせた。しかし、答えることもなくペンを走らせる。その様子はまるで、別の世界に心を囚われているかのようだった。
聞こえていないのであろうか。しかし、イケメンと私の距離は約2メートル以下。気づかない方がおかしい。ヘッドフォンのようなもので何か音楽を聞いていて、それで聞こえないのだろうか。
首をかしげていると、イケメンはペンを止めメモ帳を差し出してきた。
『俺は1年生の紅椋翔です。俺と話す時は筆談にしてください』
瞬時に目を疑った。イケメンの字は小学生のなぐり書きみたいに汚い。目を凝らして読めるのがやっとなぐらいだ。
それより、私の産まれるはずだった弟の名前と1文字違いではないか。こんな話小説や映画でしか聞いたことがない。
夢でも見ているのだろうか。試しに頰をつねってみると、痛い感触しかしない。確かに現実なんだ。本当に弟が産まれていたなら彼よりもっと下の年だ。でも似た名前という事実が弟の存在を嫌でも思い出させた。
「わ、私の弟になってくれませんか?」
気づけば口に出していた。自分でも思いもよらない言葉を。知らず知らずのうちに心のどこかで弟が欲しいと思っていた自分がいたのだろうか。
イケメンはまた肩をピクリと震わせて、それからペンを差し出してきた。そのメモ帳に書けと言っているらしい。口があるのになぜ一言も喋ろうとしないのだろう。
とはいえ、こんな恥ずかしい発言を文字にできるわけがない。初対面の人に弟になってと頼むなんて、私の口はどうかしている。聞こえてないのかどうかはわからないけど、彼の目に動揺は見られない。不幸中の幸いだ。
「あの……どうされましたか?」
不審に思い、声をかけてみる。
イケメンは肩をピクリと震わせた。しかし、答えることもなくペンを走らせる。その様子はまるで、別の世界に心を囚われているかのようだった。
聞こえていないのであろうか。しかし、イケメンと私の距離は約2メートル以下。気づかない方がおかしい。ヘッドフォンのようなもので何か音楽を聞いていて、それで聞こえないのだろうか。
首をかしげていると、イケメンはペンを止めメモ帳を差し出してきた。
『俺は1年生の紅椋翔です。俺と話す時は筆談にしてください』
瞬時に目を疑った。イケメンの字は小学生のなぐり書きみたいに汚い。目を凝らして読めるのがやっとなぐらいだ。
それより、私の産まれるはずだった弟の名前と1文字違いではないか。こんな話小説や映画でしか聞いたことがない。
夢でも見ているのだろうか。試しに頰をつねってみると、痛い感触しかしない。確かに現実なんだ。本当に弟が産まれていたなら彼よりもっと下の年だ。でも似た名前という事実が弟の存在を嫌でも思い出させた。
「わ、私の弟になってくれませんか?」
気づけば口に出していた。自分でも思いもよらない言葉を。知らず知らずのうちに心のどこかで弟が欲しいと思っていた自分がいたのだろうか。
イケメンはまた肩をピクリと震わせて、それからペンを差し出してきた。そのメモ帳に書けと言っているらしい。口があるのになぜ一言も喋ろうとしないのだろう。
とはいえ、こんな恥ずかしい発言を文字にできるわけがない。初対面の人に弟になってと頼むなんて、私の口はどうかしている。聞こえてないのかどうかはわからないけど、彼の目に動揺は見られない。不幸中の幸いだ。