「そこ!?」

 確かによく見ればそうだ。簡単にわかることだった。でもだからって、大げさすぎないか。

「こんなことめったにない!って、初対面なのに付き合い始めたの」

 柚香ちゃんは弾けるような笑顔を見せてくれた。

「てかさ、虹七ちゃんも好きな人いないのー?」

 これ以上詳しい話は聞かせないと言わんばかりに柚香ちゃんは話を逸らしてきた。

「えー、いないよ」
「そっかー、でも運命の出会いあるといいね!」
「なくても平気だよ」
「えー、もったいない」

 そのあとも会話に花が咲いて、黄昏時に心温さんが気にかけてくるまで話が尽きることはなかった。夢のように楽しい時間で明日また会えるのに終わってしまうのが名残惜しい。それぐらい幸せだった。


 次の日。ようやくしびれを切らしたのか椋翔くんは筆談してきた。図書室登校を始めてから既に1週間が経っていた。

『そんなに何の本読んでるんだ?』

 椋翔くんはため息を吐いてから話題を変えた。タイトルを見せると『俺も知ってる』などと魅力を語ってきた。

 このシーンがいいとかこのセリフ言いたいとか本が好きな気持ちがひしひしと伝わってくる。顔は笑っていなかったけれど、姿勢は真剣そのものであった。

 嫌な話題ではなかったので、仕方なく付き合う。終始バカにされたりして苛立ちが湧くばかりであった。