翌日から僕は無意識にその椋翔という人を探していた。
あの錦奈ともう一度話がしたい。どこの高校に通っているかもわからない、彼女を。
会うための最善の方法。それは、錦奈の弟と接触して会う。
しかし、知っている情報は小さい頃から本が好きで今は小説を書くことが好き。同じ学年の子。『くらと』という読みのみ。
そもそも僕の学年は3クラスあり、生徒が110人ぐらいいる。その中から容姿も知らない生徒を探すなんて、大変なことだ。まぁでも弟なんだから、錦奈と似た容姿の男子を探せばいい。
その上、両耳を押さえていたことで保健室に連れて行かれた。そのとき教室で何が起きたのか。何か大きな音でも鳴ったのだろうか。音の近さにもよるかもしれないけど、先生が心配するほどずっと両耳を塞いでいた。それはおかしいと思う。
だから気が気でなかったんだ。
傍から見れば昨日会って少し話ただけの赤の他人。探す必要も関わる必要もないと割り切る人もいるかもしれない。でも俺は既に錦奈のことが好きになってしまっていた。そう、一目惚れだ。
まず周りを見渡し、クラスメイトの中にそれらしい人がいないか探す。自分の机には『死ね』や『サイテー』といった悪口が埋め尽くすように書き殴られていたが、気にする余裕すらなかった。
でも実際、男子と女子じゃ全然見た目が違うわけで、これは気が遠くなりそうだなと思った。
授業の合間の休み時間に廊下を歩いて隣のクラスを覗いてみたり、学年合同で授業を受けるときにもキョロキョロしたりした。必死に探した。でもそれらしき人は見つかっても頭の中ではピンとこないことが多かった。
本当にこの学年にいるのだろうか。その椋翔という人は。でも先生に直接聞くのもためらわれる。
それより問題は錦奈が俺に会いたがってるかどうかだ。会いたいと言っても会いたくない人と会うのは嫌だろう。俺だって嫌だ。今やスポーツ万能なところを見せてもすごいと褒めてくれる人は誰一人としていない。
「あれ、完全に見せつけてるわ」
「特に全国大会とか行けてないのに、よくあんな偉そうになれるよね」
クラスメイトからはそんな悪口が聞こえ、嘲笑うようにクスクスしていた。僕の目の前でヒソヒソ話してくるやつらもいたっけ。
完全に蚊帳の外で、いつもの話し声や笑い声が段々全部僕の悪口に聞こえてきて、耳を塞ぎたいと何度も思ったか。 ああそんな、誰からも嫌われていじめられてるような俺に会いたがってる人なんているわけない。いたらびっくりぐらいな話だ。
きっと会いたいと思っていい資格すらない。でも会えずにはいられない。
そういえば春のクラス替えのとき、クラス分けにされた全員の名前が記載された紙を渡されたことがあった。そこからならわかるに違いない。
連絡関連の紙を入れるファイルは、これまで一度も整理したことがない。1枚も捨てずにそのまま残していたが、結果的にそれが幸いしたように思える。しかし実際のところ、ただどうでもいいと放置していただけに過ぎなかった。
家の自分の部屋で、一枚一枚のプリントを確認していく。受験生であることすら忘れ、俺は必死になってその山を整理していた。
「あった!」
一組から順に目を通していった。そもそも、「紅」という苗字は非常に珍しい。今まで見たことも、聞いたこともない苗字だったせいか、それはすぐに目に留まった。同じ苗字の者は他におらず、この人物に間違いないと確信が胸に広がる。
でも名前の漢字がわかったとしても、容姿がわかったわけでもないし、見つけれるわけがない。
あの錦奈ともう一度話がしたい。どこの高校に通っているかもわからない、彼女を。
会うための最善の方法。それは、錦奈の弟と接触して会う。
しかし、知っている情報は小さい頃から本が好きで今は小説を書くことが好き。同じ学年の子。『くらと』という読みのみ。
そもそも僕の学年は3クラスあり、生徒が110人ぐらいいる。その中から容姿も知らない生徒を探すなんて、大変なことだ。まぁでも弟なんだから、錦奈と似た容姿の男子を探せばいい。
その上、両耳を押さえていたことで保健室に連れて行かれた。そのとき教室で何が起きたのか。何か大きな音でも鳴ったのだろうか。音の近さにもよるかもしれないけど、先生が心配するほどずっと両耳を塞いでいた。それはおかしいと思う。
だから気が気でなかったんだ。
傍から見れば昨日会って少し話ただけの赤の他人。探す必要も関わる必要もないと割り切る人もいるかもしれない。でも俺は既に錦奈のことが好きになってしまっていた。そう、一目惚れだ。
まず周りを見渡し、クラスメイトの中にそれらしい人がいないか探す。自分の机には『死ね』や『サイテー』といった悪口が埋め尽くすように書き殴られていたが、気にする余裕すらなかった。
でも実際、男子と女子じゃ全然見た目が違うわけで、これは気が遠くなりそうだなと思った。
授業の合間の休み時間に廊下を歩いて隣のクラスを覗いてみたり、学年合同で授業を受けるときにもキョロキョロしたりした。必死に探した。でもそれらしき人は見つかっても頭の中ではピンとこないことが多かった。
本当にこの学年にいるのだろうか。その椋翔という人は。でも先生に直接聞くのもためらわれる。
それより問題は錦奈が俺に会いたがってるかどうかだ。会いたいと言っても会いたくない人と会うのは嫌だろう。俺だって嫌だ。今やスポーツ万能なところを見せてもすごいと褒めてくれる人は誰一人としていない。
「あれ、完全に見せつけてるわ」
「特に全国大会とか行けてないのに、よくあんな偉そうになれるよね」
クラスメイトからはそんな悪口が聞こえ、嘲笑うようにクスクスしていた。僕の目の前でヒソヒソ話してくるやつらもいたっけ。
完全に蚊帳の外で、いつもの話し声や笑い声が段々全部僕の悪口に聞こえてきて、耳を塞ぎたいと何度も思ったか。 ああそんな、誰からも嫌われていじめられてるような俺に会いたがってる人なんているわけない。いたらびっくりぐらいな話だ。
きっと会いたいと思っていい資格すらない。でも会えずにはいられない。
そういえば春のクラス替えのとき、クラス分けにされた全員の名前が記載された紙を渡されたことがあった。そこからならわかるに違いない。
連絡関連の紙を入れるファイルは、これまで一度も整理したことがない。1枚も捨てずにそのまま残していたが、結果的にそれが幸いしたように思える。しかし実際のところ、ただどうでもいいと放置していただけに過ぎなかった。
家の自分の部屋で、一枚一枚のプリントを確認していく。受験生であることすら忘れ、俺は必死になってその山を整理していた。
「あった!」
一組から順に目を通していった。そもそも、「紅」という苗字は非常に珍しい。今まで見たことも、聞いたこともない苗字だったせいか、それはすぐに目に留まった。同じ苗字の者は他におらず、この人物に間違いないと確信が胸に広がる。
でも名前の漢字がわかったとしても、容姿がわかったわけでもないし、見つけれるわけがない。