翌日は休みであった。都合がいい。丘先生や柚香ちゃんと櫂冬くんと目を合わせなくて済むから。あの顔は私をいじめてきた女子達のように怖かった。もうあんな顔見たくもない。
「お友達来てるけど、部屋に上がらせてもいい?」
「え……」
ぼんやり過ごしていると、ノックもせずに入ってきたのは心温さんだった。
来るわけがない。私にはもう友達なんてものはいない。でもどこかで心温さんの言葉を信じたいと思っている自分がいた。
「いいよ」
「じゃあ、呼んでくるわね」
しばらくして、ドアに2回ノックをされた。
「入っていいですか?ちゃんと顔見て話したいんで」
「その声は櫂冬くん!?」
驚くしかできなかった。昨日絶交とか叫んでいたあの櫂冬くんがなぜここに……。いや、それよりちゃんと顔を見て話したいって。
「櫂冬くん、もしかして私のこと……」
好きなの?
それこそ、浮気だ。それに入ってきたりなんかしたら、柚香ちゃんに怒られる。私のせいでふたりが別れるのは嫌だ。
「違います。連絡入れても既読すらついてませんし、虹七さんケガしてるから無理に歩かすわけにはいかないんで」
そういえば昨夜、スマホの電源を切ったまま眠りについてしまっていた。それが原因で、今こんな状況に陥っているのだろうか。無意識のうちに、何か大切なものを切り捨ててしまったかのように感じる。
「絶交とか言われたからつい……入っていいよ」
櫂冬くんが扉を開けて入ってくる。その顔は真摯で、昨日みたいな怒りはどこにもなかった。まるで嘘だったかのように。
「柚香に叩かれたとこちょっと腫れてますね。すいません」
「いえ。私のせいなんだし」
まだ何が悪いのか、何をしたのかすらわからないけれど。頬はまだ痛いままであった。「絶交取り消します。この際、先輩とか後輩とか関係なくタメ口でいいですか?」
そもそも距離を感じてはいた。柚香ちゃんとはタメ口でまぁそれはカノジョなんだから当たり前かもしれないけど、私だけ敬語って変な感じはした。
「いいよ」
敬語で接されるほど偉い人でもないし。
「ありがとな、本当に昨日は悪かった。僕がどうかしてた」
「いや、いいよ。元々私が悪いみたいだし」
「いやいや、勝手に悪いって決めつけて責めたし、全然話聞けてないし」
櫂冬くんは申し訳なさそうにあがり眉を下げていた。
「詳しい話、きかせてくれる?」
「私の過去の話なんだけど」
さすがに櫂冬くんを前にすると、口を開くのがためらわれる。椋翔くんの時とは全く違う感覚だ。
「ああ、それなら話しにくいよな……でもやっぱり、そこに椋翔が離れていった理由があったのかもしんないし」
そうかもしれない。そう自分に言い聞かせながら、私は思い切って過去のことを話し始める。言葉が唇から零れ落ちるたびに、心の奥にしまっていた記憶が蘇った。2度目の告白。最初のときとは違う重みがそこにはあった。過去に向き合うたび、心の中で何かが少しずつ変わっていくのを感じる。それでも、言わなければならない。そこに理由があるのなら。
「お友達来てるけど、部屋に上がらせてもいい?」
「え……」
ぼんやり過ごしていると、ノックもせずに入ってきたのは心温さんだった。
来るわけがない。私にはもう友達なんてものはいない。でもどこかで心温さんの言葉を信じたいと思っている自分がいた。
「いいよ」
「じゃあ、呼んでくるわね」
しばらくして、ドアに2回ノックをされた。
「入っていいですか?ちゃんと顔見て話したいんで」
「その声は櫂冬くん!?」
驚くしかできなかった。昨日絶交とか叫んでいたあの櫂冬くんがなぜここに……。いや、それよりちゃんと顔を見て話したいって。
「櫂冬くん、もしかして私のこと……」
好きなの?
それこそ、浮気だ。それに入ってきたりなんかしたら、柚香ちゃんに怒られる。私のせいでふたりが別れるのは嫌だ。
「違います。連絡入れても既読すらついてませんし、虹七さんケガしてるから無理に歩かすわけにはいかないんで」
そういえば昨夜、スマホの電源を切ったまま眠りについてしまっていた。それが原因で、今こんな状況に陥っているのだろうか。無意識のうちに、何か大切なものを切り捨ててしまったかのように感じる。
「絶交とか言われたからつい……入っていいよ」
櫂冬くんが扉を開けて入ってくる。その顔は真摯で、昨日みたいな怒りはどこにもなかった。まるで嘘だったかのように。
「柚香に叩かれたとこちょっと腫れてますね。すいません」
「いえ。私のせいなんだし」
まだ何が悪いのか、何をしたのかすらわからないけれど。頬はまだ痛いままであった。「絶交取り消します。この際、先輩とか後輩とか関係なくタメ口でいいですか?」
そもそも距離を感じてはいた。柚香ちゃんとはタメ口でまぁそれはカノジョなんだから当たり前かもしれないけど、私だけ敬語って変な感じはした。
「いいよ」
敬語で接されるほど偉い人でもないし。
「ありがとな、本当に昨日は悪かった。僕がどうかしてた」
「いや、いいよ。元々私が悪いみたいだし」
「いやいや、勝手に悪いって決めつけて責めたし、全然話聞けてないし」
櫂冬くんは申し訳なさそうにあがり眉を下げていた。
「詳しい話、きかせてくれる?」
「私の過去の話なんだけど」
さすがに櫂冬くんを前にすると、口を開くのがためらわれる。椋翔くんの時とは全く違う感覚だ。
「ああ、それなら話しにくいよな……でもやっぱり、そこに椋翔が離れていった理由があったのかもしんないし」
そうかもしれない。そう自分に言い聞かせながら、私は思い切って過去のことを話し始める。言葉が唇から零れ落ちるたびに、心の奥にしまっていた記憶が蘇った。2度目の告白。最初のときとは違う重みがそこにはあった。過去に向き合うたび、心の中で何かが少しずつ変わっていくのを感じる。それでも、言わなければならない。そこに理由があるのなら。