その仕事はまとめ役という重要なやつで私には二進も三進もいかなかった。

「これ、やっといてー」
 次の授業の用意をしていると、配り物を押し付けてくるクラスメイトがいた。本当ならその子が配らないといけない、授業のプリント類だ。だからといって、返そうとしても「学級委員でしょ?それぐらいやってよ」と返されるのはわかっている。だからその子の背中を一瞬睨む。

 それから押し付けられた配り物を配った。それを他のクラスメイトはくすくすと嘲笑ってくる。こいつに頼んだらなんでもやってくれる。便利やさん、決してノーが言えないイエスマン。そう思われているのだろう。実際そうなのだから否定はできない。

 毎日のようにそんなやりとりは続き、その度にため息が漏れた。
 みんなしてなんでこうなんだろう。私が何かしたわけでもないのに。つらくてはらわたが何度煮えくり返ったか。

 中2に上がる頃には心温さんを紹介され、おばあちゃんの家を出て3人で暮らすようになる。彼女は虚ろな父さんに何回も告白し、父さんはそれに折れたんだとか。選んだというより選ばされた感じだ。

 こんな世界もういやだと思いつめていた私は誰も知り合いがいないような遠くの高校を受験し、見事合格。それなりに友達もでき、平和な学校生活を取り戻しつつあった。

「虹七ちゃん!最近駅前にできたファミレス行こう!」
「いいよ!」
「え、そこネットで有名だよね!うちも連れてってー」

 委員を押し付けられることもなく、友達としょっちゅう出かけたりしていた。もちろん連絡先も交換していたし、毎日が笑顔で絶えなかった。年相応に青春を謳歌して、こんな日々がずっと続けばいいと願っていた。だが、それは忽然と虚しく破られることになる。
  
「ねぇ、知ってる?隣のクラスに問題児がいるんだって」
「へー、どんな子?」
「初対面はコミュ力が高い人でクラスの人気者だったんだけど、その子週に2、3回ぐらい忘れ物とか遅刻とかするらしいよ。友達の約束もすっぽかされたんだってー」