というか、どうしても何か頼めと言われても何も思い浮かばない。

『じゃあ、俺がなんか頼んだら答えてくれんのか?』

 その言葉には何やら威圧感がある気がして思わずこくりと頷いてしまう。

『なんでもか?』

 確認するような問いかけに再度頷くと、椋翔くんはギロリと睨んできた。

『じゃあ、今すぐ俺と一緒に寝ろって言ったら寝るのか?』

 改めて同じような言葉を投げかけられると畏怖してしまい、顎が上下に動いてしまう。すると椋翔くんは立ち上がり、私の額に指を近づけてきた。その途端、ピリッと電流を流されたような痛みが走りデコピンされたのだと自覚する。

「痛っ!」

 デコピンされたところに手をあてていると、椋翔くんはものすごい勢いでペンを走らせ、メモ帳を突き出してきた。

『奴隷じゃねぇんだぞ、姉貴は。なんでもかんでも了承すんじゃねぇ。これ他の男なら本気で襲われてるぞ』

 おどおどと顔を見てみると、椋翔くんは相当怒っているようだ。眉間にしわを寄せ、苦虫を噛み潰すように歯を食いしばっている。

 確かにそうだ。襲われても仕方ない。でも断ったらいやな予感がして、引き下がれない。私は間違いなく奴隷だ。

 そう思った瞬間、脳裏には過去の記憶がフラッシュバックしてきた。