ごもっともだ。でも小説を書いてる姿が凛々しすぎていて目が釘付けにされたなんて言えない。まるで好きとか言ってるみたいだし、椋翔くんは嫌いになりそう。というか、嫌いだ。年下のくせに偉そうに接してきやがって。

 ふつふつと怒りが湧き上がる。そのせいで自然と字が殴り書きになった。

『無理です』
『弟になってと頼んできたのは姉貴だ』

 間違いない。とんでもなく恥ずかしい発言を私はした。だからといって話かける気もなかった。

『じゃあ、それはなかったことにしよう』

 ただの図書室登校を共にしている、赤の他人。そう、そもそもの関係を断ち切ればいい。

『いやだ。この出会いを帳消しにはできない』
『なんで?』
『運命的なもの感じたから』
『私はいやです。関わりたくないです』
『姉貴に拒否権はない』

 は?なんなの、こいつ。虫の居所が悪いわ。やっぱり絶対仲良くなんて無理難題。

『それより、弟になってとは言ってきたけどさ、具体的に何すりゃいい?』

 私のぶちギレもおかまいなしに椋翔くんは話を振ってくる。けれど弟が産まれなかった私にとってはどういうふうにすれば、姉弟らしくなれるのかもわからない。
 
『知りません。ひとりっ子だし』

 それに具体例が出せない理由として、知り合ってまだ間もない人に弟の流産を話すのは少し気恥ずかしい。間違いなく空気も重たくなる。
 
『相変わらず敬語直んねぇな。まぁいい。例えば一緒に寝るとかお出かけするとかだろ』
「は?」