そこで午後の授業のチャイムが鳴る。教室に戻らなければ友達に心配されるし、かといって彼女を放おってはおけない。
「授業、行ける?」
「うん、大丈夫。聞いてくれてありがとう」
「よかった。じゃあね」
 急いでいたのでお互い名前すらも聞かずに教室に戻る。すると友達が「セーフ!」とかって安心させるように言ってくれた。
 その後も授業を受け、帰り際になる。私は友達と一緒に階段を降りていた。
 目の前では追いかけっ子をしているような女子生徒が何人かいた。その1番後には先程話していた彼女がいた。まさか避けられている真っ最中なのではないか。止めなければ。 
「にじ――」
「なんで避けてるの?もうやめて!」
 友達が背後から止めようとする声がした。でも気づいたらかまわず飛び出し叫んでいた。
「あんた、誰?」
 1番前にいた女子が振り返る。その言葉は地獄の日々の始まりでしかなかった。
「……紫花虹七」
「あ、そう。じゃあ、今から敬語ね」
「へ?あ、はい」 
 この行動がきっかけで私は気に入らないとか思われたのだろう。次の日いや、その日のうちに秒速で環境が悪くなった。
 スマホを開いてみても、友達からはいつまでも返信がこなかった。そればかりか、朝教室にきていくら「おはよう」と声をかけても無視された。まるでいない人間かのように扱われて寂しくなった。
 加えてあの女子達に呼び出され、ひどい仕打ちを受けたことが何度もあった。
 旧館の古いトイレに閉じ込められて上から冷水を浴びせられたり、トイレの床に手をついて、土下座する羽目にあったり。
 あの美女は不登校になったのか否か、私の前に姿を現さなくなった。
 そしてある日。
 教室に行ったら自分の席がなかった。
「もう、無理……」
 そう、私は中学時代の自分と重なったからという理由で、誰かもわからない美女を慰め庇い、その結果いじめを受け不登校になったのだ。