柳くんはそう言って頭を軽くかいている。
 
 間違いない。椋翔くんと私らの間には高くて分厚い壁が立ちはだかっている。うまく関わるにしても困難を要するだろう。協力は不可欠だ。
 
「確かに。でもあたしは諦めた。協力しても無駄だと思う」

 柚香さんは正反対でプイッと目線を逸らしている。
 
「僕は諦めない!そのうち椋翔と友達になりたいから」

 だが、柳くんは一歩も引かない様子だ。

「今日……追い出されたんですよね!?」
「そんなんじゃ、僕の心は折れたりしませんよ」
 
 私が問いただしてもキリッとした上がり眉を崩そうとはしない。頑なでメンタルが強そうである。
 
「相変わらず強気だなー櫂冬は」

 柚香さんはそれを見てぼやいた。口をタコのようにすぼめ、ため息を小さくついている。

「交換しましょう。私、恋愛とか興味ありませんし」

 好きでもない人のカレシをとるまねなんてしない。そもそも未経験だし。

 丘先生のお願いを引き受けたのは事実だし、少しは期待に応えなければ。

「まぁ、虹七ちゃんはとるような人に見えないしいっか。でももし浮気したらただじゃおかないよ、櫂冬!この手首は櫂冬のために使ってるんだから」
「わかってるって」

 本当に一途だなぁ、柚香さんは。私とは大違いで真っ直ぐだ。

 とりとめのない会話を交わし、連絡先を交換する。ふたりはすぐによろしく!とスタンプを送ってきた。それはおそろいのかわいいスタンプで仲が良いことが目に見えて伝わってくる。

「そのうちふたりで遊ぼ?」

 柚香さんはそう言ってニコニコと笑いかけてくる。
 
「え、僕は!?」
「女子会するの!男子はお断り」
「ま、まじかよー」