「じゃあ……柳くん」
「おう、よろしく。椋翔も話に参加してよ」

 等の本人はまだ紙に目を通していた。よっぽど読みにくいらしい。しかし、話を振られると、メモ用紙に何かに書いて机の真ん中に置いた。

『話かけんな。ふたりとも追い出すぞ!』

 ついさっきの私に対する態度と同じ感じだ。でもなんか違うような気がする。そっけなく冷徹な言葉がそこには記載されていた。

「ふたりって、あたしと櫂冬のこと?」

 柚香さんが問いかけると、椋翔くんは頷いた。どうやら耳が聞こえないというわけではないらしい。ふたりとも一応声は小さいのにどうして脅されているんだろう。

「っうわぁ!」

 柚香さんは小さくため息をつく。それから私の腕を引っ張ってきて図書室の外に連行させられた。

「あの、私はいていいみたいなんで戻りま――」
「なんなの、椋翔くんったら。あたしせっかくプロット書いたのに追い出すなんて」

 引き戸開けようとすると、柚香さんの悪態に遮られた。頰をぷくうと膨らませてご機嫌ななめである。

 確かに最低だ。どうかしている。

「えっと、椋翔くんって……」

 どういう人?態度が私とふたりきりでいた時とはまるで違うんだけど。

「もう関わり始めて数日経つのに、自分から話そうとはしてこないし、書いてる小説も一度も見せてもらってない!せっかく顔はイケメンなのにほんとムカつく」

 柚香さんはずけずけと文句を言ってきた。

 それ、もし柳くんに聞こえたらやばいのでは?イケメンって褒めてるし。いや、全体的には完全な悪口か。
 
「あの、初対面はあっちから話かけてきました」
「は?椋翔くんが自分から話かける?そんなわけないでしょ?」