午後、夕方前に魔法樹脂に封印された巨大なポイズンオイスター二体を持って現れたルシウスのパパことリースト伯爵メガエリスに、アケロニア王国の王宮は騒然となった。

「は、伯爵閣下! そ、そ、それはいったい何なのですかあ!?」
「すごいだろ、うちの下の息子が送ってきたのだ。処理すれば普通の牡蠣として食えるので、陛下たちに献上しに参った」
「ま、参られましてもおっ!」

 それでも上に話を通してくれたようで、王宮の門の前で荷物改めをされながら待っていると国王その他から連絡が来た。

「さすがに魔物を王宮内に入れるわけにはいかぬとのことです。騎士団本部で処理せよと」
「あいわかった!」

 それでは自分が顧問を務めている古巣の魔道騎士団の本部へ行くとしよう。
 屋敷から乗ってきた荷台付きの馬車の御者に移動を命じた。



 アケロニア王国の騎士団は、主に剣や武術中心に扱う騎士たちによる通常の騎士団と、騎士の中でも魔力使いを集めた魔法魔術騎士団の二つに分かれている。

 アケロニア王国自体が魔法と魔術の大国のため、魔力使いの数のほうが多い。
 その魔法魔術騎士団は組織が三つに分かれている。
 魔法使いの騎士で構成された魔法騎士団。
 魔法の下位互換である魔術の使い手の騎士の魔術騎士団。

 そして、メガエリスや息子カイルが所属する、魔法と魔術の両方を使いこなす騎士だけが集められた超エリート集団が、魔道騎士団だ。
 ちなみに、魔法と魔術、両方を使いこなす術者を特に『魔道士』と呼ぶ。
 魔道騎士団は、魔道士と騎士を兼ねる者たちの集まりだった。

 建前上はどの騎士団も同ランクとされているが、扱える手数の多彩さから、魔道騎士団は国内外から一目置かれている。



「皆のもの、ちゅうもーく!」

 練兵場に行くと、剣や槍、武術だけでなく魔法や魔術の訓練をしている騎士や見習いたちがちらほら。
 少し遅れて、先王のヴァシレウス大王と孫の王女グレイシアも到着した。

「見よ、この威風堂々たるポイズンオイスターを! 我が末の愛息子ルシウスがゼクセリア共和国ココ村の海岸で討伐した成果よ!」

 青銀の髪の髭のイケジジが声を張り上げた。

「威風……」
「堂々……?」

 えっ、どこが?

 そのとき、練兵場にいた皆さんの心は、王族も含めてひとつだった。

 なにその短い脚の生えたやつ???

 なお、メガエリスが持ってきたポイズンオイスターに描かれた顔は、笑顔バージョンふたつだ。

 ・∀・

 *´ω`*

「お、これ知ってるぞ。今どきの若い子がよく手紙に描くやつだ」

 と黒髪黒目のグレイシア王女様が顔文字を突っついている。
 祖父のヴァシレウス大王と一緒に、似たデザインの黒の軍服姿で登場である。