これまで、アケロニア王国の王家は二回、タイアド王国から受けた暴挙を受け入れている。
同盟を結んだ当初はまだ、タイアド王国のほうが国力が大きかった。そのために。
一回目は、輿入れした王女クラウディアが粗末な扱いを受けて早死にしたこと。
それだけでも父親のヴァシレウスにも辛いことだったが、二回目はもっと悪い。
ヴァシレウスの王女は王太子妃となり、後に国王に即位した相手の王妃となって第一王子を産んだが、タイアド王家はその王子を次の王太子に指名しなかった。
王太子が国王に即位した後、寵愛していた別の側室との間の王子を王太子にして、ヴァシレウスの孫にあたる王子は臣籍降下させて王家から排除している。
結婚によって互いの王家が縁戚となること前提で結ばれた両国の同盟の意義が、これによって見事に破綻した。
同盟国の王女を娶っておきながら、その間にできた第一王子を後継ぎにしなかったわけだから。
結果、アケロニア王国とタイアド王国の関係はすこぶる悪い。
以来、先王ヴァシレウスも、その跡を継いだ現国王テオドロスも、そしてその王女グレイシアも着々と国力を蓄えて、タイアド王国への復讐を虎視眈々と狙っている。
だが、さすがにこのまま両国の関係が悪いままでは問題有りと認識したのか、タイアド王家は現在の王太子の婚約者に、臣籍降下させた元第一王子の娘を指名した。
そう、この先王ヴァシレウスにとってはひ孫にあたる娘をだ。
これで、王太子とヴァシレウスのひ孫の令嬢が無事に婚姻を果たして王子が生まれ、次世代の国王に即位すれば、ようやく両国の関係は回復する。
はずだった。
「何でも、今の王太子に真実の愛の相手ができたとかで。王家主催の社交パーティーで、わたくしの再従妹セシリアは婚約破棄されたそうだ」
面白そうにグレイシア王女が説明してくれたが、こちらも祖父王と同じで黒目がまったく笑っていない。
(そりゃ、ご自身のご親戚のご令嬢がそんな目に遭ったとなればのう。タイアド王家には自滅願望でもあるのか?)
それでメガエリスは三人の王族から息子のルシウスの件の説明を受けたわけだが。
「戦争準備のため騎士団や兵団は動かせない。しかし、冒険者ギルド本部からの支援要員の派遣要請も無視できない。……悩んでいたところに我が息子がネギを背負った鴨の如くやってきたと」
何とも頭の痛い話だった。
元は兄のほうを派遣しようと考えていたそうだが、ちょうど結婚式と重なってしまい、代替要員を誰にするか悩んでいたところだったそうだ。
それに、確かに兄が新婚で、その邪魔をしそうなお兄ちゃん大好きっ子の弟ルシウスが家を離れるのは良い案だ。
しかし、親のメガエリスに一言も相談せず強行するのは如何なものなのか。
「もっと早く教えていただきたかったですぞ。我が家では誘拐かと大騒ぎだったのですからな!」
「「「あの子供が誘拐なんかされるタマか」」」
「何を申されますか! うちの子はあんなに可愛いのですぞ、チョコレートあげるからおいでと言われたらホイホイついて行きかねない!」
「そういう輩には、文字通りタマを潰せと教えてあるから大丈夫だろう。それでだな……」
と先王ヴァシレウスは実務担当のグレイシアに話を引き継いだ。
現在、タイアド王国には警告を出して、睨みを利かせている段階だとのこと。
「もし本当に戦争になった場合、騎士団が出兵することになる。その間、魔道騎士団顧問のお前にも王都の騎士団に詰めてもらうことになる」
「えっ。私もこの後、息子のところに行くつもりなんですがのう」
「「「却下!」」」
同盟を結んだ当初はまだ、タイアド王国のほうが国力が大きかった。そのために。
一回目は、輿入れした王女クラウディアが粗末な扱いを受けて早死にしたこと。
それだけでも父親のヴァシレウスにも辛いことだったが、二回目はもっと悪い。
ヴァシレウスの王女は王太子妃となり、後に国王に即位した相手の王妃となって第一王子を産んだが、タイアド王家はその王子を次の王太子に指名しなかった。
王太子が国王に即位した後、寵愛していた別の側室との間の王子を王太子にして、ヴァシレウスの孫にあたる王子は臣籍降下させて王家から排除している。
結婚によって互いの王家が縁戚となること前提で結ばれた両国の同盟の意義が、これによって見事に破綻した。
同盟国の王女を娶っておきながら、その間にできた第一王子を後継ぎにしなかったわけだから。
結果、アケロニア王国とタイアド王国の関係はすこぶる悪い。
以来、先王ヴァシレウスも、その跡を継いだ現国王テオドロスも、そしてその王女グレイシアも着々と国力を蓄えて、タイアド王国への復讐を虎視眈々と狙っている。
だが、さすがにこのまま両国の関係が悪いままでは問題有りと認識したのか、タイアド王家は現在の王太子の婚約者に、臣籍降下させた元第一王子の娘を指名した。
そう、この先王ヴァシレウスにとってはひ孫にあたる娘をだ。
これで、王太子とヴァシレウスのひ孫の令嬢が無事に婚姻を果たして王子が生まれ、次世代の国王に即位すれば、ようやく両国の関係は回復する。
はずだった。
「何でも、今の王太子に真実の愛の相手ができたとかで。王家主催の社交パーティーで、わたくしの再従妹セシリアは婚約破棄されたそうだ」
面白そうにグレイシア王女が説明してくれたが、こちらも祖父王と同じで黒目がまったく笑っていない。
(そりゃ、ご自身のご親戚のご令嬢がそんな目に遭ったとなればのう。タイアド王家には自滅願望でもあるのか?)
それでメガエリスは三人の王族から息子のルシウスの件の説明を受けたわけだが。
「戦争準備のため騎士団や兵団は動かせない。しかし、冒険者ギルド本部からの支援要員の派遣要請も無視できない。……悩んでいたところに我が息子がネギを背負った鴨の如くやってきたと」
何とも頭の痛い話だった。
元は兄のほうを派遣しようと考えていたそうだが、ちょうど結婚式と重なってしまい、代替要員を誰にするか悩んでいたところだったそうだ。
それに、確かに兄が新婚で、その邪魔をしそうなお兄ちゃん大好きっ子の弟ルシウスが家を離れるのは良い案だ。
しかし、親のメガエリスに一言も相談せず強行するのは如何なものなのか。
「もっと早く教えていただきたかったですぞ。我が家では誘拐かと大騒ぎだったのですからな!」
「「「あの子供が誘拐なんかされるタマか」」」
「何を申されますか! うちの子はあんなに可愛いのですぞ、チョコレートあげるからおいでと言われたらホイホイついて行きかねない!」
「そういう輩には、文字通りタマを潰せと教えてあるから大丈夫だろう。それでだな……」
と先王ヴァシレウスは実務担当のグレイシアに話を引き継いだ。
現在、タイアド王国には警告を出して、睨みを利かせている段階だとのこと。
「もし本当に戦争になった場合、騎士団が出兵することになる。その間、魔道騎士団顧問のお前にも王都の騎士団に詰めてもらうことになる」
「えっ。私もこの後、息子のところに行くつもりなんですがのう」
「「「却下!」」」