年が変わり、春になった頃にはルシウスの故郷アケロニア王国でグレイシア王女様が出産されたそうな。
第一子は王子で、ユーグレンと名付けられた。
母親の王女様そっくりの黒髪黒目の王子様だそうだ。
「ふふふ。グレイシア様にそっくりなら、ヴァシレウス様とテオドロス様にもそっくりなんだろうな〜」
冒険者ギルドの食堂で新聞を読みながらルシウスが笑う。
ヴァシレウスは王女様のおじいさまで、テオドロスはお父上に当たる。
去年の夏の終わりにココ村支部を出立したルシウスたちは、広大な円環大陸をぐるっと大回りで逃げる飯マズ男を追いかけることになった。
ルシウスが最初に常駐していたココ村支部のあるゼクセリア共和国は円環大陸の南西部にあった。
そこから南部、東部、北東部、北部……と追い続けた。
また南西部のゼクセリア共和国でついに飯マズ男を追い詰めることができて、今度こそ冒険者ギルド本部まで護送し収監させることができたのだった。
ルシウスたちは任務完了の報告のため、一度ココ村支部に戻ることにした。
もう春も過ぎて、5月に入ったばかりのそろそろ初夏の季節だった。
するとルシウスたちの帰還の報告を受けたギルマスのカラドンが、慌ててギルドの奥から飛び出てきた。
「ルシウス! 何やってんだ、早くアケロニアに帰れ! 兄貴の嫁さんが出産間近だそうだ!」
「えっ。それは不味い」
ルシウスのおうち、リースト伯爵家は魔法剣士の家だった。
親から受け継いだ血の中に、金剛石ダイヤモンドの魔法剣を持っている。
魔法剣は一族の者なら大抵、本能で自然と扱えるようになる。
ところが能力が高い子供ほど、出産時に母親の胎内から産道を通って生まれてくるとき、そのストレスで無意識のうちに魔法剣を出して母体や自分を傷つけてしまうことがある。
だから産婆は必ず一族の女性だし、同じ魔法剣を持つ一族の主だった者は、能力が高くなる傾向にある本家筋の子供が産まれるときは必ず集まって、すぐ対処できるよう隣室に集まって控えている。
ルシウスも、もちろんそのことは知っていた。
「報告は私がしておいてあげる。あなた、まだ長距離の転移は慣れてないでしょ、フリーダヤに連れ帰ってもらうといいわ」
聖女のロータスが言ってくれたので、ありがたくフリーダヤの空間転移術で即座にアケロニア王国へ戻った。
「あっ。おうち帰る前に国王陛下に帰還のご報告しなきゃ!」
「それは私がやっておくから、君は早くおうちへ!」
そしてルシウスが王都のリースト伯爵家の本家邸宅内に足を踏み入れた瞬間。
かすかに赤ん坊の産声が聞こえてきたと思ったら、わっと歓声が上がった。
「産まれた!?」
第一子は王子で、ユーグレンと名付けられた。
母親の王女様そっくりの黒髪黒目の王子様だそうだ。
「ふふふ。グレイシア様にそっくりなら、ヴァシレウス様とテオドロス様にもそっくりなんだろうな〜」
冒険者ギルドの食堂で新聞を読みながらルシウスが笑う。
ヴァシレウスは王女様のおじいさまで、テオドロスはお父上に当たる。
去年の夏の終わりにココ村支部を出立したルシウスたちは、広大な円環大陸をぐるっと大回りで逃げる飯マズ男を追いかけることになった。
ルシウスが最初に常駐していたココ村支部のあるゼクセリア共和国は円環大陸の南西部にあった。
そこから南部、東部、北東部、北部……と追い続けた。
また南西部のゼクセリア共和国でついに飯マズ男を追い詰めることができて、今度こそ冒険者ギルド本部まで護送し収監させることができたのだった。
ルシウスたちは任務完了の報告のため、一度ココ村支部に戻ることにした。
もう春も過ぎて、5月に入ったばかりのそろそろ初夏の季節だった。
するとルシウスたちの帰還の報告を受けたギルマスのカラドンが、慌ててギルドの奥から飛び出てきた。
「ルシウス! 何やってんだ、早くアケロニアに帰れ! 兄貴の嫁さんが出産間近だそうだ!」
「えっ。それは不味い」
ルシウスのおうち、リースト伯爵家は魔法剣士の家だった。
親から受け継いだ血の中に、金剛石ダイヤモンドの魔法剣を持っている。
魔法剣は一族の者なら大抵、本能で自然と扱えるようになる。
ところが能力が高い子供ほど、出産時に母親の胎内から産道を通って生まれてくるとき、そのストレスで無意識のうちに魔法剣を出して母体や自分を傷つけてしまうことがある。
だから産婆は必ず一族の女性だし、同じ魔法剣を持つ一族の主だった者は、能力が高くなる傾向にある本家筋の子供が産まれるときは必ず集まって、すぐ対処できるよう隣室に集まって控えている。
ルシウスも、もちろんそのことは知っていた。
「報告は私がしておいてあげる。あなた、まだ長距離の転移は慣れてないでしょ、フリーダヤに連れ帰ってもらうといいわ」
聖女のロータスが言ってくれたので、ありがたくフリーダヤの空間転移術で即座にアケロニア王国へ戻った。
「あっ。おうち帰る前に国王陛下に帰還のご報告しなきゃ!」
「それは私がやっておくから、君は早くおうちへ!」
そしてルシウスが王都のリースト伯爵家の本家邸宅内に足を踏み入れた瞬間。
かすかに赤ん坊の産声が聞こえてきたと思ったら、わっと歓声が上がった。
「産まれた!?」