「……セーブされた残りの報酬は、没収ですか?」

「まさか! ちゃんとランクが規定まで上がれば残額はまとめてお渡しするよ。でも、とりあえずこちらの事情はわかったかな?」

「わかった。けど、もうちょっと金額増やしてほしいです。もっとごはん食べたい。お腹すいた」

 うぐっ、と受付カウンターの中から様子を見守っていた受付嬢とギルマスが変な声を出した。

 育ち盛りの十四歳がお腹いっぱい食べられない状況を作ってしまったことに、罪悪感が半端ない。



 サブギルドマスターは手元の資料、ルシウスに関するデータに視線を落とした。

「うん、デビルズサーモン級を討伐できるなら、相当な金額があるね。君の食事分は本来の金額分から差し引けるようにしておくから、ギルド内の食堂でなら好きな物を食べていいよ」
「ほんと!? いいの!??」

 ここココ村支部の食堂は酒場を兼ねていて、品数も豊富だった。
 僻地すぎて、ギルドマスターをはじめとする職員や冒険者たちの楽しみは食事と酒ぐらいしかないのだ。
 ここだけは外せぬと厚めの予算をかけている。

 まだ子供のルシウスが好むようなメニューやスイーツ、ジュースなども多いし、事前に厨房に頼んでおけば好きな料理を作ってもらうことも可能だ。

「それ以外で必要な買い物があれば、私に声をかけるといい。今の君に大金を持たせるわけにはいかないけど、貧しい思いをさせたいわけじゃないからね。一緒に買い物に行ってあげる」
「わかった!」

 というわけで、一件落着である。



 ちなみに、アケロニア王国の王女様からの手紙には、


『この子供に大金を持たせると、おやつやどうでも良いものに使ってしまうので、討伐報酬は金額をセーブして控えめに渡してやってほしい』


 と注意書きがあった。

 ああ、お小遣い渡すとすぐ使い切ってしまうタイプのお子さんなんですね、とギルドマスターと受付嬢は生温い表情で笑い合ったものである。

 そのため、本人に渡すのは無駄遣いできない程度の金額に抑えてあったのだが、あまり上手くやれなかったギルドマスターだった。



「サブギルマス……いいとこ持ってき過ぎでは?」
「文句言わないでください。あなたたちが臨機応変にやらないのが悪いんです」

 どうせ、滞在中はこの僻地ギルドを拠点の常駐で、他の地域に出ることもないのだ。

 食費だけでなく、武器防具その他の冒険者活動に必要な出費も、まだ未成年だからとの理由でギルド側で管理してしまえばいい。