「ただいま戻りましたー。……って、あなたたち、何やってるんです?」

 首都まで資金や追加人員の援助要請に出ていたサブギルドマスターがついに帰還した。

 ココ村支部は、厳つい髭面ギルドマスターに、穏やかしっかり者のサブギルドマスターとで切り盛りしている僻地ギルドだ。
 正直、サブギルドマスターのいないここしばらくは、様々な面で本当にきつかった。

 受付前で半泣きの青銀の髪の少年に首を傾げつつ受付カウンター奥の事務室に入ると、何やら言い合いをしている受付嬢と髭面ギルマスが。

 かくかくしかじか、と話を聞いて呆れ果てたサブギルマス。

 溜め息をつくと、適当に棚から資料の書類を持って、カウンターの前で泣いている少年の前に跪き、ハンカチで涙を拭ってやる。

(おや、随分可愛い男の子が来ましたね)

 サブギルドマスターも冒険者ギルドで仕事をするようになって長いので、容姿の良い冒険者たちは見慣れている。
 それでも、群を抜いて麗しい少年だなと思う。

「おじさん、誰?」
「お兄さんはこのギルドのサブマスターです」

 おじさんを拒否した! とざわめく周囲。

「ギルマスたちがすみませんね、ええと……ルシウス・リースト君?」
「はい」

「いろいろ君に対して説明が足りなかったようです。とりあえず、デビルズサーモンは討伐報酬の高い魔物です。本当なら君はもっとたくさんの報酬を得られるんです」
「え? どういうことですか?」

 まだ小柄な自分に合わせて目を合わせてくれるサブギルドマスターを、ルシウスは驚いたように見つめた。

「ギルド側では、君に渡す報酬金額をセーブさせてもらっています」
「なんで!?」

 何とビックリの新事実。



「理由は2つ。まず、今の君の冒険者ランクが最低ランクだから。次に、君がまだ十四歳の未成年だから」
「それで何で報酬額がセーブなの?」

 当然の疑問だ。

「低ランクの未成年に多額の報酬を渡すとね、身の丈に合わない装備を買って結局使いこなせなくて死んでしまったり、柄の悪い冒険者たちに取り上げられたり、騙されて奪われることが多くてね」
「………………」

 事実である。
 もっとも、ここココ村支部に限っていえば、僻地すぎて人も少なく入れ替わりも滅多にないため、これまではそこまで厳密な対応はしていなかった。

 だが、さすがに十四歳の討伐系冒険者は若すぎる。
 しっかり管理しないといろいろ危険だ。

「君がこの国の成人年齢の18歳なら全額渡してた。あるいは未成年でも、冒険者ランクがせめてCランクなら」

 まだルシウスの冒険者ランクは最低のEランクだ。
 強いのは確認済みだが、上のランクに上がるには、ある程度の討伐回数が必要だった。