「ケンを追え!」
「くそ、逃げられた!」
カラドン主導で飯マズ男を追ったが足が早く、ギルドの建物を出るともう姿はなかった。
沖合から迫ってくるお魚さんモンスターの数がいつもより多い。
自分が逃げやすいよう、数を増やして魔物を発生させたと見える。
「とりあえず魚を倒してから探索だ!」
焦る必要はもうなかった。
諜報スキル持ちのシルヴィスによって、飯マズ男の潜伏先は既に森林地帯だと判明している。
男が他国の工作員で、ここココ村海岸を中心に侵略を手引きする準備を行なっていたところまでは明らかになっていた。
わざわざココ村支部の臨時スタッフとして入り込むほどだ。ココ村海岸はあの男にとって重要な拠点のはずだ。必ず戻ってくる。
あとは本人がふたたび戻ってくるのを、罠を張って待ち構えていればいい。
そして実際、飯マズ男はココ村海岸に姿を現した。
「まさか当日中に戻って来るなんてね」
バカなの? ねえバカなの? と思いっきり煽ってやりたくなる。
「生意気なクソガキが……! 俺がどれだけ苦労してココ村支部に入ったと思ってる!」
「しーらない」
夜の海岸を散歩していて、唐突に目の前に現れた“影”にルシウスは足を止めた。
(なるほど、魔力を黒い影にして隠蔽スキルを発動してるのか)
だが、ルシウスが手の中に金剛石の聖剣を出すと、聖剣から放たれるネオンブルーの魔力に照らされて、影が晴らされていく。
下から現れたのは案の定の飯マズ男だ。
憎悪で目をギラつかせ、息が荒い。キモい。
「お前さえいなければ上手くいってたんだ!」
「嘘つけ。あんたの計画はザルみたいに穴だらけだったでしょ。だからバレたんだよ。ミルズ王国の工作員さん」
「くっ、こうなったらお前を始末して……! ………………!?」
手に短剣を握り締めて襲い掛かろうとした男の足が動かない。
足元を見ると、透明な魔法樹脂に足首から下を固定されていた。
「何だこれは!?」
「リースト伯爵家の男はねえ。甘くないよ?」
簡単に闇討ちできるほど甘くない。
足から膝、太腿。
短剣を持っていた手。
そうして少しずつ男を魔法樹脂の中に封じ込めていく。
「こ、これは魔法樹脂!? 馬鹿な、生きた人間の封入はできないはず……!」
「まあ一般的にはね」
だが生憎、ハイヒューマンのルシウスは、今では世界中で使われているポピュラー術式の魔法樹脂や魔術樹脂のオリジンを扱う、唯一といえる存在だ。
封入物への禁忌などない。
逆恨みで夜道で闇討ちされるも、ルシウスはやり返して魔法樹脂に封入し、海にポイ。
……しようとしたところで、寸前のところで魔術師フリーダヤと聖女ロータスが駆けつけてきて慌てて止められた。
「待った! それはちょっと待て、ルシウス!」
「あれ、フリーダヤさん。とロータスさん」
ルシウスによって魔法樹脂に封入されたままの男を、ちょいっと身体強化で抱え上げ、ギルドの建物内へ運び入れる。
短剣を持って襲い掛かろうと叫びかけのまま固められた男は、ちょっとしたホラーオブジェだった。キモい。
「海に投げ捨てて、海の底で魔法樹脂を解いてやろうと思ったのに」
「結構えげつないこと考えるよね、君」
「喧嘩売られっぱなしだったし、敵なら容赦する必要ないでしょ」
いったいどれだけこの飯マズ男にルシウスが煩わされたと思っているのか。
恨みは深い。
とりあえず防音設備のある3階、ギルマスの執務室へ男を運んだ。
集まったのはギルマス、サブギルマス、そして受付嬢のギルド側の人間と、常駐冒険者のルシウスと女魔法使いのハスミン。
それに魔術師フリーダヤと聖女ロータスになる。
一同が集まったところでルシウスに魔法樹脂を頭部だけ一度でも解除させて、魔術師のフリーダヤが尋問用の自白魔術をかけて情報を聞き出すことにした。
そこで全ての謎が明らかになった。
「くそ、逃げられた!」
カラドン主導で飯マズ男を追ったが足が早く、ギルドの建物を出るともう姿はなかった。
沖合から迫ってくるお魚さんモンスターの数がいつもより多い。
自分が逃げやすいよう、数を増やして魔物を発生させたと見える。
「とりあえず魚を倒してから探索だ!」
焦る必要はもうなかった。
諜報スキル持ちのシルヴィスによって、飯マズ男の潜伏先は既に森林地帯だと判明している。
男が他国の工作員で、ここココ村海岸を中心に侵略を手引きする準備を行なっていたところまでは明らかになっていた。
わざわざココ村支部の臨時スタッフとして入り込むほどだ。ココ村海岸はあの男にとって重要な拠点のはずだ。必ず戻ってくる。
あとは本人がふたたび戻ってくるのを、罠を張って待ち構えていればいい。
そして実際、飯マズ男はココ村海岸に姿を現した。
「まさか当日中に戻って来るなんてね」
バカなの? ねえバカなの? と思いっきり煽ってやりたくなる。
「生意気なクソガキが……! 俺がどれだけ苦労してココ村支部に入ったと思ってる!」
「しーらない」
夜の海岸を散歩していて、唐突に目の前に現れた“影”にルシウスは足を止めた。
(なるほど、魔力を黒い影にして隠蔽スキルを発動してるのか)
だが、ルシウスが手の中に金剛石の聖剣を出すと、聖剣から放たれるネオンブルーの魔力に照らされて、影が晴らされていく。
下から現れたのは案の定の飯マズ男だ。
憎悪で目をギラつかせ、息が荒い。キモい。
「お前さえいなければ上手くいってたんだ!」
「嘘つけ。あんたの計画はザルみたいに穴だらけだったでしょ。だからバレたんだよ。ミルズ王国の工作員さん」
「くっ、こうなったらお前を始末して……! ………………!?」
手に短剣を握り締めて襲い掛かろうとした男の足が動かない。
足元を見ると、透明な魔法樹脂に足首から下を固定されていた。
「何だこれは!?」
「リースト伯爵家の男はねえ。甘くないよ?」
簡単に闇討ちできるほど甘くない。
足から膝、太腿。
短剣を持っていた手。
そうして少しずつ男を魔法樹脂の中に封じ込めていく。
「こ、これは魔法樹脂!? 馬鹿な、生きた人間の封入はできないはず……!」
「まあ一般的にはね」
だが生憎、ハイヒューマンのルシウスは、今では世界中で使われているポピュラー術式の魔法樹脂や魔術樹脂のオリジンを扱う、唯一といえる存在だ。
封入物への禁忌などない。
逆恨みで夜道で闇討ちされるも、ルシウスはやり返して魔法樹脂に封入し、海にポイ。
……しようとしたところで、寸前のところで魔術師フリーダヤと聖女ロータスが駆けつけてきて慌てて止められた。
「待った! それはちょっと待て、ルシウス!」
「あれ、フリーダヤさん。とロータスさん」
ルシウスによって魔法樹脂に封入されたままの男を、ちょいっと身体強化で抱え上げ、ギルドの建物内へ運び入れる。
短剣を持って襲い掛かろうと叫びかけのまま固められた男は、ちょっとしたホラーオブジェだった。キモい。
「海に投げ捨てて、海の底で魔法樹脂を解いてやろうと思ったのに」
「結構えげつないこと考えるよね、君」
「喧嘩売られっぱなしだったし、敵なら容赦する必要ないでしょ」
いったいどれだけこの飯マズ男にルシウスが煩わされたと思っているのか。
恨みは深い。
とりあえず防音設備のある3階、ギルマスの執務室へ男を運んだ。
集まったのはギルマス、サブギルマス、そして受付嬢のギルド側の人間と、常駐冒険者のルシウスと女魔法使いのハスミン。
それに魔術師フリーダヤと聖女ロータスになる。
一同が集まったところでルシウスに魔法樹脂を頭部だけ一度でも解除させて、魔術師のフリーダヤが尋問用の自白魔術をかけて情報を聞き出すことにした。
そこで全ての謎が明らかになった。