「特級、いいねえ。何でもいいから同じ特級持ちが5人以上、その人に特級の資格有りと認定すると発生するんだ。ちなみに私は“魔法魔術開発”の特級ランク持ち」

 はい、とこちらもお代わりの殻の皿を持ってきた魔術師のフリーダヤ。
 彼は魔力使いの世界を新旧に分断した、(リンク)という術式の開発者として、世界で最も有名な魔力使いの一人である。

「私はオヤジさんに調理スキル、特級ランクの資格有りと認めるよ。いや〜ここに来てから(初日を除いて)美味しいごはんが楽しみでねえ」

「私は“直観系スキル”の特級。私も認めるわ。飯ウマ万歳。あ、お代わり半分でお願い」

 こちらは聖女のロータス。
 聖なる魔力の持ち主には優れた直観や、それを元に人々に助言するための忠告スキルがある。
 彼女の場合はそれの最上級ランクの能力の持ち主ということになる。

「ならギルドマスターの俺が認めねえわけにはいかねえな。ゲンさん、大剣使い特級の俺も認定するぜ!」

 おっと、ギルマスのカラドンも特級持ちだった!
 彼はレアなSSランク冒険者でもある。納得だった。



「んー……」

 二杯めのクラムチャウダーをもぐもぐしながら、ルシウスは自分のステータスを確認している。

 ルシウスにも特級ランクの項目があった。

(“愛情(限定)”ってなにこれ? でも特級ランクなんだよなー)

「僕も属性に特級ランクがあったからオヤジさんを特級の資格有りと認めるよ」
「お、おう。ありがとさん」

「これで4人め」
「てことは」
「あと一人か!」

 食堂内を見回すが、残りの面々はぷるぷると否定に首を振ったり、手を振ったりだ。
 残念、他に特級はいないらしい。

「今のココ村支部に集まってるだけで、通常は特級持ちなんか、そうはいないですもんねえ」
「あ、僕もうひとり特級ランク持ち知ってる。“王”の特級でね。故郷の先王様なんだけど」
「それって」

「ヴァシレウス大王じゃん。マジで王特級? 大王じゃなくて?」
「王特級だから、大王の称号を貰ったんじゃなかったっけ? オヤジさんの料理を送ったら王族の皆さんすごく喜んでくれたってお手紙貰ったし。事情を話したら認定してくれるんじゃないかな」

 話の流れにオヤジさんがちょっと青ざめている。
 何やら大ごとになってきた。

 王族、マジか。



「あ、いや待って。……オヤジさん、ちょっと君を人物鑑定させてもらってもいい?」
「あ、はい、どうぞ」

 魔術師のフリーダヤがオヤジさんに人物鑑定スキルを使っている。

「あれ!? オヤジさんにもう調理スキルの特級ランク付いてるぞー!?」

 更に深くステータスを見ていくと、オヤジさんの特級認定者の名前が出てくる。

「私、ロータス、カラドン、ルシウス……ルシウスで二人分になってるって何でだろ?」
「そりゃそうでしょ。今の僕は特級二つあるもん。“魔法剣士(聖剣)”と、何かよくわかんない性格に関するやつ」
「と、特級ランクの複数持ちか! これまたレアなやつだ」

 というわけで、朝食の短い時間だけで料理人のオヤジさんのランクアップが果たされてしまったわけだ。

「こ、こんな簡単にランクアップできるなんて」

 当の本人が一番ビックリしている。

「調理スキルは上級以上になると薬師スキルと互換性があることは知ってるかい?」
「あ、はい。ただ、薬師の師匠に伝手がなかったのでそっち方面はサッパリで」
「私たちのファミリーに薬師の子がいるから、近いうちに呼び寄せてあげる。良い機会だから、薬師のレクチャーを受けるといいよ」
「そうですね……ありがたくお受けします」

 あっという間にレクチャーの話まで、魔術師フリーダヤとオヤジさんの間で付いていた。



「ファミリーの薬師ってどんな人?」
「リコっていうの。腕が良いからあちこちから引っ張りだこの人気者でね。お酒好きの愉快なおじさんよ」

 遅寝して遅れて食堂にやってきていた女魔法使いのハスミンに聞いてみた。
 話を聞く限り、少なくともフリーダヤやロータスのようなフリーダムさではなさそうだ。

「ポーション作りの名手でね。忙しいから、ココ村支部に常駐はできないと思うけど……」
「そうなんだー」

 何かつい最近、ポーションの話を聞いたような覚えが。何だったっけ?