ギルドに戻り、食堂に入ると、ふわっとしたアサリとミルクの匂いが厨房から漂ってきた。
既に料理人のオヤジさんが厨房からワゴンで寸胴など配膳の用意を済ませていて、冒険者たちの数名は先に食事していた。
「オヤジさーん! アサリは何のスープになったー?」
「おう、坊主。おはようさん、今朝はクラムチャウダーだよ」
「わあ」
深めのスープ皿に注いでくれたのは、アサリのミルクスープことクラムチャウダー。
具材は見たところ、剥き身のアサリやハマグリ、玉ねぎやジャガイモ、ニンジン、それに青菜など。
アサリ以外のベーコンなどは入っていない。
仕上げに生パセリのみじん切り。
そこへ、軽く焼いた、ナッツ入りの厚めにスライスされたバゲットを添えて。
なお、お代わりは残りがある限り自由である。
朝食はこれだけだが、追加が欲しい人は別注文も可能である。
とはいえ、ここココ村支部での食事はお魚さんモンスターが出没し終わる夕方以降の夕飯がメインなので、朝は軽めで済ませる冒険者たちが多かった。
「クラムチャウダー、僕すき。おうちが壊れて避難してたとき、缶詰のやつよく食べてたよ」
牛乳で伸ばして温めるだけの缶詰スープのことだ。
便利なのでどこのご家庭でも数缶はストックしてあると言われるほど普及している。
「昨日、坊主が獲ってきてくれた生の二枚貝を使ってるんだ。もっと美味いぞ〜」
「オヤジさんが作るものはみんな美味しいよ?」
さて、いただきます。
スプーンでちょっとだけとろみのあるスープを、具材ごとすくって、お口へ。
「………………」
いつぞやのカニ祭りのときのように、皆が無言だった。
味付けはあまり濃くはない。アサリやハマグリから強い旨みが出ているし、多少の塩胡椒ぐらいだろう。
それがかえって貝の旨みを引き立てている。
ほっこりじんわり。
そんな言葉が似合うスープだった。
朝のおなかに優しい。
添えられたナッツ入りのバゲットをスープに浸して食べると、これがなかなか。
気づくと、一同顔をゆるんゆるんに蕩けさせていた。
「しあわせのあじ」
「滋味溢れるって感じだねえ〜」
しみじみ、じんわりと沁みる。
「ここは海辺だから海水で砂抜きできるのがいいよね。ただの塩水で砂抜きするときみたいに貝の味が抜けなくて良いんだ」
料理人のオヤジさんの解説に、一同なるほど〜と感心している。
「あなた、この味が出せるなら調理スキルの究極を目指してみたら? 案外、届くかもしれないわよ?」
「究極ってえと……」
聖女ロータスが盲目ながら目を光らせている。
調理スキルは、初級、中級、上級とあり、調理を仕事にする場合はオプションとしてプラスが必要になる。
そして究極は“特級”というランクになるわけだが。
「はは、いくら聖女様のお言葉でも、特級ランクは」
無理だろ、とオヤジさんが苦笑したところへ、ルシウスがお代わり目当てでやってきた。
「オヤジさんのもっと美味しいごはん、僕たべたいな?」
空になったスープ皿を渡してお代わりをよそって貰いながら、こてん、と小首を傾げておねだりした。
「うっ」
子供の可愛いおねだりには敵わない。
いつも美味しい美味しいと言ってモリモリ食べてくれるルシウスは、オヤジさんの密かなお気に入りだった。
つい、長らく会えていない自分の息子の幼い頃を思い出してしまうのだ。
「ま、まあ、努力してできるなら、……うん」
何か試験などがあるなら受けてみようかな、と単純に考えていたオヤジさんの調理ランクは、現在上級プラス。
だが、更にその上の特級ランクへのランクアップ条件は不明と言われていた。
既に料理人のオヤジさんが厨房からワゴンで寸胴など配膳の用意を済ませていて、冒険者たちの数名は先に食事していた。
「オヤジさーん! アサリは何のスープになったー?」
「おう、坊主。おはようさん、今朝はクラムチャウダーだよ」
「わあ」
深めのスープ皿に注いでくれたのは、アサリのミルクスープことクラムチャウダー。
具材は見たところ、剥き身のアサリやハマグリ、玉ねぎやジャガイモ、ニンジン、それに青菜など。
アサリ以外のベーコンなどは入っていない。
仕上げに生パセリのみじん切り。
そこへ、軽く焼いた、ナッツ入りの厚めにスライスされたバゲットを添えて。
なお、お代わりは残りがある限り自由である。
朝食はこれだけだが、追加が欲しい人は別注文も可能である。
とはいえ、ここココ村支部での食事はお魚さんモンスターが出没し終わる夕方以降の夕飯がメインなので、朝は軽めで済ませる冒険者たちが多かった。
「クラムチャウダー、僕すき。おうちが壊れて避難してたとき、缶詰のやつよく食べてたよ」
牛乳で伸ばして温めるだけの缶詰スープのことだ。
便利なのでどこのご家庭でも数缶はストックしてあると言われるほど普及している。
「昨日、坊主が獲ってきてくれた生の二枚貝を使ってるんだ。もっと美味いぞ〜」
「オヤジさんが作るものはみんな美味しいよ?」
さて、いただきます。
スプーンでちょっとだけとろみのあるスープを、具材ごとすくって、お口へ。
「………………」
いつぞやのカニ祭りのときのように、皆が無言だった。
味付けはあまり濃くはない。アサリやハマグリから強い旨みが出ているし、多少の塩胡椒ぐらいだろう。
それがかえって貝の旨みを引き立てている。
ほっこりじんわり。
そんな言葉が似合うスープだった。
朝のおなかに優しい。
添えられたナッツ入りのバゲットをスープに浸して食べると、これがなかなか。
気づくと、一同顔をゆるんゆるんに蕩けさせていた。
「しあわせのあじ」
「滋味溢れるって感じだねえ〜」
しみじみ、じんわりと沁みる。
「ここは海辺だから海水で砂抜きできるのがいいよね。ただの塩水で砂抜きするときみたいに貝の味が抜けなくて良いんだ」
料理人のオヤジさんの解説に、一同なるほど〜と感心している。
「あなた、この味が出せるなら調理スキルの究極を目指してみたら? 案外、届くかもしれないわよ?」
「究極ってえと……」
聖女ロータスが盲目ながら目を光らせている。
調理スキルは、初級、中級、上級とあり、調理を仕事にする場合はオプションとしてプラスが必要になる。
そして究極は“特級”というランクになるわけだが。
「はは、いくら聖女様のお言葉でも、特級ランクは」
無理だろ、とオヤジさんが苦笑したところへ、ルシウスがお代わり目当てでやってきた。
「オヤジさんのもっと美味しいごはん、僕たべたいな?」
空になったスープ皿を渡してお代わりをよそって貰いながら、こてん、と小首を傾げておねだりした。
「うっ」
子供の可愛いおねだりには敵わない。
いつも美味しい美味しいと言ってモリモリ食べてくれるルシウスは、オヤジさんの密かなお気に入りだった。
つい、長らく会えていない自分の息子の幼い頃を思い出してしまうのだ。
「ま、まあ、努力してできるなら、……うん」
何か試験などがあるなら受けてみようかな、と単純に考えていたオヤジさんの調理ランクは、現在上級プラス。
だが、更にその上の特級ランクへのランクアップ条件は不明と言われていた。