どうしてこんなことになったのだろう。
少年ルシウスは、量産品の鉄の剣を両手で握って絶望していた。
目の前の海岸には、巨大な魚の群れ。
ただの魚ではない。脚が付いている。
人間のような二本の脚が付いたデッカい魚が、大挙して押し寄せてきているのだ。
「何でこんなことに。魚に脚が生えてたら、それもう魚類って言わないよね、ただの水陸両用生物じゃない!」
「ルシウスー! 無駄口叩いてる暇はねえぞ、……来るぞ!」
自分も大剣を構えた冒険者ギルドの髭面ギルドマスターが怒鳴ってくる。
「わかってる。わかってるけど、こんな気持ち悪い魔物倒すの僕いやだあああああ!」
「冒険者の皆さんの心情を代弁してくれてありがとよ! オラッ、行くぜー!!!」
のしのし、と艶かしい生足で歩いてくる魚たちに向かって、ギルマスが率先して駆けていく。
後には十数人の冒険者たちも続く。
剣を持つ剣士や、杖持ちの魔力使いなどメンツは多彩だ。
「うええ……しかもあいつら、攻撃色バリバリで食えなさそうだし。あっちなんてフグじゃん、毒持ってて駄目なやつ!」
お魚は好きだったが、そもそも魔物だ。
食指が動かない。
「しかもあの脚って食べられるの? 味は魚? それとも人肉???」
「ルシウスー! てめぇ、一人だけ見物決め込んでんじゃねえぞー!」
「だってえ」
キモいし美味しそうでもないし、戦いのモチベーションが上がらない。
と思ったら少年ルシウスの視界に、驚きの光景が飛び込んできた。
「新手が来たぞー! デビルズサーモンだー!!!」
「サーモン? ……鮭か!」
鮭なら大好物だ。
しかもデカい。
年のわりにちょっと小柄なルシウスよりも大きい。
可食部はじゅうぶんである。
黒光りするデビルズサーモンにも二本の脚が生えていたが、そこはあえて不問にするとしよう!
「あんな大っきい鮭倒せたら、兄さんに自慢できるじゃない! よーし行っくぞー!」
だが、少年ルシウスはまだ知らない。
おうちに帰って、尊敬するお兄ちゃんに再会できるのが何ヶ月も先のことであることを。
そもそもなぜ、まだ十四歳で未成年の彼がこんな僻地の海岸でお魚モンスター相手に戦う羽目になったのか。
それは十日ほど前に遡る。
少年ルシウスは、量産品の鉄の剣を両手で握って絶望していた。
目の前の海岸には、巨大な魚の群れ。
ただの魚ではない。脚が付いている。
人間のような二本の脚が付いたデッカい魚が、大挙して押し寄せてきているのだ。
「何でこんなことに。魚に脚が生えてたら、それもう魚類って言わないよね、ただの水陸両用生物じゃない!」
「ルシウスー! 無駄口叩いてる暇はねえぞ、……来るぞ!」
自分も大剣を構えた冒険者ギルドの髭面ギルドマスターが怒鳴ってくる。
「わかってる。わかってるけど、こんな気持ち悪い魔物倒すの僕いやだあああああ!」
「冒険者の皆さんの心情を代弁してくれてありがとよ! オラッ、行くぜー!!!」
のしのし、と艶かしい生足で歩いてくる魚たちに向かって、ギルマスが率先して駆けていく。
後には十数人の冒険者たちも続く。
剣を持つ剣士や、杖持ちの魔力使いなどメンツは多彩だ。
「うええ……しかもあいつら、攻撃色バリバリで食えなさそうだし。あっちなんてフグじゃん、毒持ってて駄目なやつ!」
お魚は好きだったが、そもそも魔物だ。
食指が動かない。
「しかもあの脚って食べられるの? 味は魚? それとも人肉???」
「ルシウスー! てめぇ、一人だけ見物決め込んでんじゃねえぞー!」
「だってえ」
キモいし美味しそうでもないし、戦いのモチベーションが上がらない。
と思ったら少年ルシウスの視界に、驚きの光景が飛び込んできた。
「新手が来たぞー! デビルズサーモンだー!!!」
「サーモン? ……鮭か!」
鮭なら大好物だ。
しかもデカい。
年のわりにちょっと小柄なルシウスよりも大きい。
可食部はじゅうぶんである。
黒光りするデビルズサーモンにも二本の脚が生えていたが、そこはあえて不問にするとしよう!
「あんな大っきい鮭倒せたら、兄さんに自慢できるじゃない! よーし行っくぞー!」
だが、少年ルシウスはまだ知らない。
おうちに帰って、尊敬するお兄ちゃんに再会できるのが何ヶ月も先のことであることを。
そもそもなぜ、まだ十四歳で未成年の彼がこんな僻地の海岸でお魚モンスター相手に戦う羽目になったのか。
それは十日ほど前に遡る。