「今日は下級の魔物狩りに行ってみようと思うんだけど」
「うん。私もどれくらいやれるか試してみたい」
次の日、エイラとジュードは魔物狩りに行くことにした。
ギルド街の奥に広がる草原には角兎や妖虫などの下級の魔物が生息しており、比較的初心者の冒険者たちがよく狩りをしている。薬草が生えていることもあり、薬草採取を目的として入る人たちもいた。
ギルドで教えてもらい、その草原へとやって来た。先が見えないほど広く、所々に下級魔物が見え隠れしているのがわかる。
「行こうか」
「そうだね」
少し進むとエイラは近くに角兎を見つけた。角兎の方から襲ってくる様子はなく、逃げられないように狙いを定める。
――ヒュンッ
氷の矢を飛ばす。掠りはしたが、角兎の動きが素早く仕留めることは出来ない。
「ルル!」
「うん!」
――ポアンッ
――シュッ
角兎を水の球に閉じ込め身動きを取れなくした後、水の球ごと氷の矢で貫いた。
「やった!」
倒れた角兎の所へ行くと角を根元から切り取り、角の下から魔石を取り出す。角も砕いて粉にすると薬として使うことがでるため収集対象だ。
「魔石と角の両方売れるのはお得だね。でもちょっと、生々しいかも……」
「それは仕方ないよ。慣れないと」
エイラとルルが角兎を覗き込んでいると少し離れた所でジュードが剣を振るっている音が聞こえる。
ジュードは既に数匹の角兎と妖虫を捕らえていた。
「ジュードすごいね。もうこんなに倒したんだ」
「まぁ、下級魔物ばかりだから」
その後も各々魔物を狩り、ギルドで教えられた薬草を見つけては採取していった。
「けっこう集まったね」
「ああ、そろそろ戻ろうか」
二人は集めた魔石や薬草を持ち換金するためにギルドへと戻ろうとした時、何やら草原の奥の方が騒がしいのに気付く。
「キャー!!」
「「逃げろ!!」」
奥からどんどん冒険者たちが走り逃げてくる。
すると頭上から大きな咆哮が聞こえてきた。
――ブオォー
近くにいた冒険者たちは逃げている者と戦おうとしている者がいる。
「ド、ドラゴン!?」
「エイラ、逃げよう」
ジュードはエイラの手を引き必死に走るが、ドラゴンは二人に襲いかかろうとしてくる。
「逃げきるのは無理だ」
エイラとジュードは走るのを止め、振り返りドラゴンと対峙する。ジュードは剣を構えた。
「ルル、私たちも!」
ドラゴンは二人めがけて火を吹く。エイラは氷の盾でかわすとジュードが盾の死角から跳びかかりドラゴンに斬り込んでいく。翼を傷付けられたドラゴンは地上に降り立った。
近くにいる者たちもドラゴンに攻撃を仕掛ける。蔓をドラゴンに巻き付ける者、炎の渦で攻撃する者、エイラとジュードも氷の矢を飛ばし、剣で斬りかかるが大きな打撃を与えることは出来ない。
すると、ドラゴンは尾を振りかざし咆哮を上げると辺りを覆いつくす程の炎を吹き出した。
「危ない!」
エイラが声を上げると炎を消し去るほどの水砲が勢いよくドラゴンに直撃する。よろめくドラゴンに大量の蔓が巻き付き身動きを取れなくすると、風と融合し炎の竜巻となった炎砲がドラゴンを覆う。そしてジュードがドラゴンの頭上へ飛び込むと頭部を貫いた。
――ドッシーンッ
戦っていた者は一瞬時が止まったように固まったが、倒れて動かなくなったドラゴンを見て、一斉に歓喜の声をあげ始める。
「うおー!」
「やったぞ!!」
「え! 俺ら凄くない?!」
ここにいたのは皆レベルの低い冒険者ばかりだった。数人で力を合わせたとはいえドラゴンを倒せたことは奇跡に近い。
ジュードは貫いた頭部から魔石を取り出し近くにいた冒険者に渡した。
「ん? え? 俺?!」
渡された冒険者は両手に抱える程の大きさの魔石を持ち狼狽えている。
「それ、換金するだろ。ここにいる皆で分けて。俺はいらない」
そう言い、ジュードはその場から離れた。
「はぁはぁ……っ」
「エイラ! 大丈夫!? 力の使い過ぎだよ!」
他の者が倒れたドラゴンを取り囲む後ろでエイラはしゃがみ込み呼吸を乱している。妖精の力を使ったのだ。
「大丈夫。こんなに力使ったの初めてだったから」
「もう、無茶しないでよ」
「でも、皆無事で良かった」
冷や汗をかきながらへラリと笑うエイラの頬にルルは小さな体をぎゅっとすり寄せた。
(早く、ユグドラシルを見つけないと)
そこに慌てた様子のジュードが駆けてきた。
「エイラ! 大丈夫か?」
「うん。大丈夫、大丈夫」
「でも顔色悪いよ」
「ちょっと慣れない戦闘して疲れたのかな。少し休めば大丈夫だよ」
ジュードは無理やり笑顔を見せるエイラの膝下に腕を入れるとぎゅっと体を支えそのまま抱き上げる。
「え!? ジュード?」
「休みにいこう」
ジュードはエイラを抱いたまま草原を出るとギルド街の休憩所にエイラを座らせた。
「あ、ありがとう」
「ああ」
エイラはジュードに抱えられ運ばれたことが恥ずかしくて顔が火照っていはいるが、呼吸は落ち着き体は楽になってきていた。
「ジュード、ドラゴンの魔石は良かったの?」
「俺はいいよ。エイラは分け前欲しかった?」
「いや、私もいいかな」
妖精たちの力を使ったことがバレてしまわないように、エイラは今回の件に関わらずにいたかった。
その後、ギルド職員や上級冒険者などがドラゴンの回収や状況調査などで草原が一時騒がしかったが、早々に切り上げていたエイラとジュードが事情聴取されることはなかった。
「うん。私もどれくらいやれるか試してみたい」
次の日、エイラとジュードは魔物狩りに行くことにした。
ギルド街の奥に広がる草原には角兎や妖虫などの下級の魔物が生息しており、比較的初心者の冒険者たちがよく狩りをしている。薬草が生えていることもあり、薬草採取を目的として入る人たちもいた。
ギルドで教えてもらい、その草原へとやって来た。先が見えないほど広く、所々に下級魔物が見え隠れしているのがわかる。
「行こうか」
「そうだね」
少し進むとエイラは近くに角兎を見つけた。角兎の方から襲ってくる様子はなく、逃げられないように狙いを定める。
――ヒュンッ
氷の矢を飛ばす。掠りはしたが、角兎の動きが素早く仕留めることは出来ない。
「ルル!」
「うん!」
――ポアンッ
――シュッ
角兎を水の球に閉じ込め身動きを取れなくした後、水の球ごと氷の矢で貫いた。
「やった!」
倒れた角兎の所へ行くと角を根元から切り取り、角の下から魔石を取り出す。角も砕いて粉にすると薬として使うことがでるため収集対象だ。
「魔石と角の両方売れるのはお得だね。でもちょっと、生々しいかも……」
「それは仕方ないよ。慣れないと」
エイラとルルが角兎を覗き込んでいると少し離れた所でジュードが剣を振るっている音が聞こえる。
ジュードは既に数匹の角兎と妖虫を捕らえていた。
「ジュードすごいね。もうこんなに倒したんだ」
「まぁ、下級魔物ばかりだから」
その後も各々魔物を狩り、ギルドで教えられた薬草を見つけては採取していった。
「けっこう集まったね」
「ああ、そろそろ戻ろうか」
二人は集めた魔石や薬草を持ち換金するためにギルドへと戻ろうとした時、何やら草原の奥の方が騒がしいのに気付く。
「キャー!!」
「「逃げろ!!」」
奥からどんどん冒険者たちが走り逃げてくる。
すると頭上から大きな咆哮が聞こえてきた。
――ブオォー
近くにいた冒険者たちは逃げている者と戦おうとしている者がいる。
「ド、ドラゴン!?」
「エイラ、逃げよう」
ジュードはエイラの手を引き必死に走るが、ドラゴンは二人に襲いかかろうとしてくる。
「逃げきるのは無理だ」
エイラとジュードは走るのを止め、振り返りドラゴンと対峙する。ジュードは剣を構えた。
「ルル、私たちも!」
ドラゴンは二人めがけて火を吹く。エイラは氷の盾でかわすとジュードが盾の死角から跳びかかりドラゴンに斬り込んでいく。翼を傷付けられたドラゴンは地上に降り立った。
近くにいる者たちもドラゴンに攻撃を仕掛ける。蔓をドラゴンに巻き付ける者、炎の渦で攻撃する者、エイラとジュードも氷の矢を飛ばし、剣で斬りかかるが大きな打撃を与えることは出来ない。
すると、ドラゴンは尾を振りかざし咆哮を上げると辺りを覆いつくす程の炎を吹き出した。
「危ない!」
エイラが声を上げると炎を消し去るほどの水砲が勢いよくドラゴンに直撃する。よろめくドラゴンに大量の蔓が巻き付き身動きを取れなくすると、風と融合し炎の竜巻となった炎砲がドラゴンを覆う。そしてジュードがドラゴンの頭上へ飛び込むと頭部を貫いた。
――ドッシーンッ
戦っていた者は一瞬時が止まったように固まったが、倒れて動かなくなったドラゴンを見て、一斉に歓喜の声をあげ始める。
「うおー!」
「やったぞ!!」
「え! 俺ら凄くない?!」
ここにいたのは皆レベルの低い冒険者ばかりだった。数人で力を合わせたとはいえドラゴンを倒せたことは奇跡に近い。
ジュードは貫いた頭部から魔石を取り出し近くにいた冒険者に渡した。
「ん? え? 俺?!」
渡された冒険者は両手に抱える程の大きさの魔石を持ち狼狽えている。
「それ、換金するだろ。ここにいる皆で分けて。俺はいらない」
そう言い、ジュードはその場から離れた。
「はぁはぁ……っ」
「エイラ! 大丈夫!? 力の使い過ぎだよ!」
他の者が倒れたドラゴンを取り囲む後ろでエイラはしゃがみ込み呼吸を乱している。妖精の力を使ったのだ。
「大丈夫。こんなに力使ったの初めてだったから」
「もう、無茶しないでよ」
「でも、皆無事で良かった」
冷や汗をかきながらへラリと笑うエイラの頬にルルは小さな体をぎゅっとすり寄せた。
(早く、ユグドラシルを見つけないと)
そこに慌てた様子のジュードが駆けてきた。
「エイラ! 大丈夫か?」
「うん。大丈夫、大丈夫」
「でも顔色悪いよ」
「ちょっと慣れない戦闘して疲れたのかな。少し休めば大丈夫だよ」
ジュードは無理やり笑顔を見せるエイラの膝下に腕を入れるとぎゅっと体を支えそのまま抱き上げる。
「え!? ジュード?」
「休みにいこう」
ジュードはエイラを抱いたまま草原を出るとギルド街の休憩所にエイラを座らせた。
「あ、ありがとう」
「ああ」
エイラはジュードに抱えられ運ばれたことが恥ずかしくて顔が火照っていはいるが、呼吸は落ち着き体は楽になってきていた。
「ジュード、ドラゴンの魔石は良かったの?」
「俺はいいよ。エイラは分け前欲しかった?」
「いや、私もいいかな」
妖精たちの力を使ったことがバレてしまわないように、エイラは今回の件に関わらずにいたかった。
その後、ギルド職員や上級冒険者などがドラゴンの回収や状況調査などで草原が一時騒がしかったが、早々に切り上げていたエイラとジュードが事情聴取されることはなかった。