「蘭丸についてはただの遭難者をそのまま家来にする訳にもいかないので可成に頼む事にしました。確か貴方は『藤森蘭』だったわね。『藤』を取って……」
「森蘭……丸。」

(うん……気づいてたけど何か恥ずかしい……)

 蘭は一人赤面した。

「さて、これで全部でしょうか。」
 市が穏やかに二人を見る。蘭は顎に手を当てて考えた。
「そうですね……今のところこれで……あっ!」
「ビッ…クリしたぁ……何よ、もう…」
「悪い、驚かせて。もう一つあったんだ。聞きたい事。」
「何ですか?」
「城の名前です。ここのお城は何という名前ですか?」
 今更っていう感じだけど大事な事だ。蘭は市の答えを待った。

「清洲城です。」
「清洲、城……」


 清洲城。それは信長の死後、織田家の後継者及び遺領の配分を決定することを目的とした会議が行われた場所。集まった家臣は柴田勝家、丹羽長秀、羽柴秀吉、池田恒興の4人。
 ここで決定した事柄が後の日本の行く末を決めたと言っても過言ではない、歴史的にも非常に重要な場所である。


「ありがとうございます。市様。」
 蘭はひきつってしまう自分の顔を抑えるのに必死だった……

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