「情報を整理してみようか。ここ数日で色んな事があったから頭の中がぐちゃぐちゃだよ。」
 信長を送り出した後、市を含めて三人で蝶子の部屋に来ていた。座って早々、蝶子が先程の言葉を口にしたのだ。それを聞いた蘭も頷いた。
「そうだな。市様もいる事だし。付き合ってくれますか?」
「えぇ、もちろん。わたしが知ってる事は全部お話します。」
 市が微笑む。早速とばかりに三人で輪になって座り、ここまでの段階で得た事を口に出してみた。

「まず、この世界はパラレルワールド。つまり私達のいた地球とは別の次元にもう一つ同じような星があって、ここはその戦国時代というところであると仮定する。まぁ、もうほとんど確定と言ってもいいわ。」
「そうだな。そうでも思わなきゃ、納得いかない事だらけだ。」
「わたしにとったらこの世界が当たり前だけど、貴方達がそう思うならそれを前提とした方がいいですね。」
 市が同意してくれた事に素直にホッとした。ここで『違う』と否定されたら話が進まない。

「この世界には力を持つ人が存在する。この尾張の国では信長様の『心眼』、秀吉さんの『瞬間移動』、そして市様の『共鳴』。この三人。他の国にも能力を持っている人はいるけど、詳しくはわからない。という事でいいですよね?」
「そうです。」
「信長様の『心眼』は、相手の心を視る事ができる。そして市様の『共鳴』の能力で、お二人は心を通じさせる事もできる。」
「はい。体力を消耗してしまうので、滅多な事では使えませんが。」
 苦笑混じりにそう言うと、蝶子が『単に便利な力、という訳でもないんですね。』と相槌を打つ。蘭は続けた。

「そしてこの事は信長様と市様。そして俺と蝶子しか知らない。秀吉さんや光秀さんでさえも、知らないんですよね?」
「光秀は相当頭の良い人ですから、お兄様が人の心を読む事に長けている事には気づいているでしょう。現に言葉の足りないお兄様の言いたい事や言葉の裏に潜んでいる真意を汲み取ってくれます。それが織田家に仕えてまだ浅い光秀を重宝する理由です。」
 蘭は初めて光秀に会った時の事を思い出した。
 祝言の準備について信長が命令した時、あの時点でその祝言が偽装だという事に気づいていたという。相当な頭脳の持主だ。頭が回るというのだろうか。それも一つの能力である。


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