「ほら、持ってきたぞ。全部は当然無理だから、一部だけど。それとご所望のトンカチも。」
「ありがとう。こんだけあれば十分よ。」
 蘭が背負ってきた風呂敷を畳に置くと、蝶子が目を爛々とさせて喜んだ。それに引き換え疲れた顔の蘭は、そのまま寝っ転がる。
「あぁーー!重かった!マジ死にそう……途中で何回も『俺、何でこんな事やってんだろ?』って虚しくなって、風呂敷ごと置いて帰ろうかと思ったよ。」
「情けないわね~……」
 弱々しい声を出す蘭を見もせずに一刀両断して、蝶子は早速風呂敷をほどいて中身を見た。

「本当はトンカチにプラスしてルーペも欲しかったけど仕方ないね。この時代にはないだろうし。」
「虫眼鏡くらいはあるんじゃないか?」
「いや、ないでしょ。」
 またしてもバッサリ切られる。
「冷てぇな~」
「いつも通りよ。それより蘭も手伝ってよ。とりあえず全部並べてみよう。……あれ?」
「ん?どうした?」
「これってタイムマシンのハンドル?あとこれは……モニター?」
 風呂敷を開いて物色していた蝶子が『これ』と言って取り出した物を見せてきた。蘭はそれを見て頷く。

「あぁ。そうだと思う。何かわかるかもって思って、運転席の辺りを重点的に集めてきたんだ。」
「やるじゃない、蘭!まぁ、どこまで役に立つかわかんないけど。」
「もっと労えよ!俺を!」
「それは今後の働き次第ね。」
「えぇ~~……?」
「あら?仲良く何をしてらっしゃるんですか?二人共。」
「え?あ!市さん!?」
 廊下から声がして同時に振り向くと、そこには穏やかに微笑む市がいた。慌てて風呂敷の中の物を隠すがもう見られてしまっていた。

.