「そう。私達はいわゆるイレギュラーな存在のはず。なのに殺されもせずに、こうして上手く溶け込んでる。その為に何人もの人が口裏を合わせて、事実をねじ曲げて……こうまでして私達がここにいる意味って何なんだろう?」
「……どういう事?」
「何か裏があるんじゃないかって思うの。あの信長って男……本当に私達が何処から来たか知らないのかなぁ?」
「何だよ、それ!信長が嘘を言ってるって事かよ!」
「ちょっと!声でかい……」
「あ、あぁ……すまん……」
 今度は蘭が注意されて小さくなる。蝶子はため息を一つついた。

「嘘を言ってるっていうか、隠してる気がする。本当は私達が何処から来たのか、何者なのか透視して全部知ってるとか。」
「何の為に隠してるんだ?」
「さぁ?」
 冷たく首を振る蝶子に、蘭はがっくりと項垂れた。
「それにおかしな事はまだあるわ。」
「今度は何……?」
「それこそ超能力の事よ。透視とか瞬間移動とか、あり得ると思う?22世紀の時代でもそんなの実在しない。それが560年も前の時代に普通にあるなんて、信じられない。」
「…………」

(確かに……色々あり過ぎてあんま深く考えてなかったけど、冷静になってみればあり得ない事だらけだ。メンタリストやマジシャンは人の心理を読んでさもわかった風な事を言うけど、あれはタネがあったり人を操る技術があるだけの事。本当に人の心を読む事などできない。だけど信長は、何もしていないのに心を読んだ。蝶子に至っては心の奥の想いとやらも暴かれた。秀吉の瞬間移動については最早人間離れしている。単なる超能力と納得しかねるところはあるけど……)

「じゃあ蝶子はどうだと思うんだ?あの超能力にタネも仕掛けも存在するとか?」
「何言ってるの?タネも仕掛けもある訳ないじゃない。」
「はぁ?さっきと言ってる事が違うぞ?」
 呆れて言うと、蝶子は何故か胸を張って言い放った。
「だから!ここは560年前の日本じゃないの。超能力が普通に存在する世界。つまり、パラレル・ワールドね。」

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