「えっ!?じゃああの真面目そうで誠実そうな光秀さんが、信長を裏切って殺しちゃうの!?」
「ちょっ!声が大きいって……」

 所変わって、ここは蝶子の部屋。先程市の部屋を後にした二人は真っ直ぐここに来た。自分は光秀が起こした本能寺の変で信長と一緒に死んでしまう『森蘭丸』という事にされたと蘭から聞かされた蝶子がビックリして大声を上げて、慌てた蘭がその口を手で塞いだという訳である。

「誰が聞いてるかわかんないんだから気をつけろよ……」
「ごめん、ごめん。でも急にそんな事言われてビックリするなって方が無理でしょ。」
 肩をいからせて注意する蘭とは正反対に、蝶子は冷静に反論する。廊下に誰もいない事を確認すると、とりあえず戸を閉めて座った。
「壁薄いから声は小さくな。」
「わかってるわよ。」
「史実通りにいくならあと20……何年かは無事にこの世界にいられるはずなんだ。この間におやっさんがタイムマシンを作って助けに来てくれれば、本能寺で死なずに済む。」
「でも来なかったら?いくら父さんでも私達が今何処にいるかなんてわからないでしょ。」
「それは……そうだけど……」
「それに私思ったんだけど、何かこの世界変じゃない?」
「変って?」
「私達がここに来たのは偶然よね?」
「当たり前だろ。たまたまタイムマシンに乗っちまって、行き着いた先がここだったってだけで……」
『ここ』と畳を指先で叩く。それを見て蝶子は大きく頷いた。

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