「……サル。」
 光秀の足音が聞こえなくなった頃、信長は小さい声でそう呟いた。
「お呼びでしょうか。信長様。」
 さっきまで誰もいなかった場所――廊下から外の庭へと降りる階段の下に、男が膝まづいていた。

「仕事だ。裏山に行ってくれ。正体不明の何物かが天から落ちてきたそうだ。何処かからの奇襲かも知れん。」
「承知しました。」
 そう言うが早いか、次の瞬間にはそこからいなくなっていた。

「相変わらず速いな。」
 ぽつりと溢した言葉は一陣の風に紛れて消えた。

.