今後の対策を本部長と話し合っていると、あっという間に夕方になった。その間、事務所に出入りしたのは出前を持ってきた蕎麦屋だけだったが、この日2人目の訪問者が現れた。本部長が呼んだ男だった。受け取った名刺には私立探偵と書かれていた。
「枯田の選挙参謀を見張ってくれ」
 本部長が新聞の切り抜きを探偵に渡した。枯田の横で口を真一文字に結んでいる選挙参謀の顔が写っていた。
「わかりました。今日から張り込みを始めます」
「よろしく頼む。時間がないから1日でも、いや、1時間でも早く何かを掴んでくれ。頼む」
「わかりました。全力を尽くします」
 そして、裏口からそっと出ていった。事務所の前にはまだ多くの報道陣が見張りを続けていた。