「見~つけた!」
 わたしは喜び勇んで彼らの元に走っていった。
「四角、見つけたよ」
「誰?」
 5人が食い入るようにわたしを見た。
「柔道部にいた」
 エヘンと自慢げに、わたしは鼻を高くした。
「しかくだ・りゅうと君」
「しかくだ?」
「しかくだって、どんな字書くの?」
 5人が興味津々の顔つきでわたしを見たので、ノートに書いて彼らに見せた。
「鹿久田隆人」
「へ~」
 彼らの驚きようは半端なかった。
 縦横斜め○△□、全員が揃った。しかも彼らはそれぞれの競技で群を抜く才能を有し、その実力をいかんなく発揮する逸材だった。全員が1年生の時からレギュラーのポジションを獲得し、中学3年生の時にはそれぞれの競技で優勝、もしくは準優勝の栄誉を勝ち取った。当然のようにスポーツ関係者が注目した。その期待は大きく、将来日本を代表する選手になる逸材だと目されたほどだった。彼らはプレッシャーに負けることなくその期待に見事に応え、中学校卒業後も目覚ましい活躍を見せ続けた。
 建十字は野球の強豪校に進学し、3年生の夏、甲子園大会で準優勝をした。エラーによるサヨナラ負けという悔しい結果だったが、準々決勝と準決勝で連続完封と連続ホームランという快挙を成し遂げた。その活躍が評価され、ドラフト会議で1位指名をした『北海道ベアーズ』に入団した。その上、契約時に5年後の大リーグ挑戦の確約を得た。
 横河原はサッカーの強豪校に進学し、1年生からレギュラーに抜擢された。3年生の冬には、全国高等学校サッカー選手権大会でベスト4にまで進んだ。PK戦に負けて決勝戦には行けなかったが、大会の得点王となった。そのシュート力が評価され、Jリーグの強豪『東京ゴールデンアローズ』に入団した。プロでも1年目から活躍し、ヨーロッパのクラブチームからのオファーを待つ日々を過ごしている。
 奈々芽は駅伝の名門『緑山学院大学』に進学し、1年生からレギュラーの座を勝ち取った。正月の箱根駅伝では5区の山登り区間を任され、4年連続で区間賞を獲得した。卒業後は実業団の名門『松早電機』に入社した。マラソンで日本新記録を出すことと、オリンピック代表の座を射止めることを狙っている。
 丸岡は都立体育大学でスポーツ心理学を学び、卓球部のエースとして活躍した。大学卒業後は実業団の卓球チームに入り、キャプテンを任されている。
 三角は高校を卒業するとアメリカに渡り、大学と大学院でスポーツ生理学を学ぶと共に、水泳の名門チーム『サンタバーバラ・スイミングクラブ』で練習をしながら次のオリンピック代表の座を狙っている。
 鹿久田は丸岡と同じ都立体育大学に入学し、大学4年生の時に柔道の日本選手権で準優勝した。それが評価されてナショナルチームの特別強化選手となり、日本の無差別級を牽引する一人となっている。