そんな恋をこじらせている四歳の私、アリッサ・ファーンズワースだけど、困ったことが起きている。

 大好きなお兄ちゃん──なぜこのセカイに居るのかはわからないけれど──レイモンド・ファーンズワース(と私)は、どうやら二週間前にお父さんが亡くなったみたいだ。
 お墓参りに行って、分かった。
 私の中の「四歳のアリッサ」が涙を流すのだ。
 不思議な感覚だった。
 見たことの無い人のために涙が溢れるというのは。

 だがしかし。
 困ったことは、お父さんが亡くなったことではない。
 その後のことなのだ。

「あらー、レイモンドくん、おはよう。……ねえ、()()()()、考えてみてくれたぁ?」

 厚化粧に香水がむんむん。
 五十くらいだろうか。
 年齢を省みもしない若作りが、あの御局様の宮地さんにそっくりだ。

「いいえ、バーバラ叔母さん。この家は、長男の息子である僕が継ぎます。この妹の、アリッサと一緒に」

 きゃ。
 お兄ちゃんが私の肩を抱き寄せる。
 とっても力強くて、七歳にはとても見えなくて、私(広告代理店勤務三十九歳)は年甲斐もなく頬を赤らめてしまった。
 ……でも。

 んふー。
 キッつい化粧の匂いの奥から、これまた気持ちの悪い吐息を吐いて、その御局様は言った。

「そうは言ってもねえ。もともとお母さんもいないし、お父さんもいなくなっちゃったじゃなーい? おうちの色々、オトナに任せちゃうのがいいと思うなあ。たとえばうちのオーウェンとオリヴァーとか」

「やあ、レイモンド君──アリッサちゃん。こんにちは」
「こんにちは、お二人さん」

 醜くて仕方ないバーバラ叔母さんの後ろから現れた七つくらい年上の双子の少年を見た時、私はなぜか知らない記憶がフラッシュバックして、そして気を失った。