「愛しいリルオード、おいで」
「はい、あなた」

 新たに王太子になったアレクシス陛下に、今日も抱いていただきました。
 わたくしが最後まで守った純潔も、無事、愛する陛下にあげることができました。
 あれから、一年。
 何度も身体を重ね、赤ちゃんを授かることができました。
 身体がもともと細身だったから、初産はとても大変だったけど、王室総出でサポートしてくれたので、無事に出産できました。
 可愛い可愛い女の子です。
 名前はエレンディラと名付けました。

 母様が立てるようになりました。
 更に、父様が目覚めたと、病院から連絡がありました。
 二人ともまだリハビリが必要だけど、あと少しで家族みんなで暮らせそうです。

 陛下は毎夜愛してくれます。
 一回じゃとてもたりないみたいで、わたくしが果てるまで愛をくれます。
 おかげで二人目をお腹に授かりました。
 昨日、分かったのです。

 ああ、なんて幸せなんでしょう。
 なんておいしいんでしょう。

「リルオード、エレンディラが泣いているよ」
「はいはい、今お母さんがおっぱいあげますからねぇ」

 ちゅっちゅっ。

 美味しそうに飲んでくれます。
 そうだ、母様がよくわたくしに歌ってくれた子守唄。
 あれはよく効くのです。
 たしか──

「……」

「……? どうした?」
「あ、いえ……わたくしは今、無くしたものを思い出したのです。……とても、大事なものを」
「……今、幸せではないのか?」

 ええ。
 もちろん。

 優しい夫は笑います。
 わたくしも、笑顔を作りました。

 とても、優しい笑顔を。


【第二章.完】