「アリッサちゃんっ? だめよお、オトナのパーティに勝手に入ってきちゃあ」
「かってにはいってきたのは、バーバラオバサン、あなたじゃなくて?」

 私は冷たい目でオバサンを睨みつける。
 オバサンの顔には、まだ余裕があるように見える。
 ……その余裕、いつまで持つかしら。

「みなさん、これをごらんくださいまし!」

 そう言ってわたしは収支報告書を高らかにパーティ会場に撒いた。
 ……誰も取ろうとしない。

「ぷっ……アリッサちゃん? そういうイタズラはね、やっていいことと悪いことが」

 もちろん、想定済みだ。
 そのうちの一枚を持って、つかつかと陛下の前に持っていった。

「こ、これ、陛下の前で無礼であろう!」
「まあ、まて……」

 陛下が興味を示した。

「……随分、支出が増えておるな?」
「はい」

 私が笑顔で答える。
 そして、バーバラオバサンの所に駆け寄って、左手をひっぱった。

「あれれー? これ、おかあさまのかたみのエメラルドのゆびわとそっくりー! おかあさまとおそろいなのかなー? ……それとも、とっちゃってたりして?」
「……アリッサちゃん。イタズラはその辺にしないとおばさん許しませ──」
「あれれー? オーウェンおにいちゃんとオリヴァーおにいちゃんのタイピン。おとうさまのとそっくりー! これもとっちゃったのかなー?」
「アリッサ! いい加減に──!」

「盗ったんですよ」

 ざわっ。
 車椅子に乗ったその人の影に、皆が注目する。

「……レイモンド……お前なんで……」

 オーウェンが呟いた。

「僕は半月前、その兄弟に突き落とされました。階段から」

 ピエールさんに車椅子を押されて、お兄ちゃんが入ってきた。

「そして、その時、薄れゆく意識の中で聞いたんです。……『この家を乗っ取るためだ』『母さんに頼まれただろう』……ってね」

 皆の視線がバーバラに集まる。

「しょ、証拠は? 証拠が何もありませんわ! ねえ、陛下、この者達の発言には全て証拠がございませんわ!」

 バーバラが必死に訴える。
 ……やっぱり、アレを使わなきゃだめそうね。

「アシュリーさん、おねがい!」

 私がそう呼ぶと、ひとりのメイドが、何か大きな装置をトローリーに乗せて運んできた。
 そして、神妙な面持ちで、静かに言った。

「みなさまのお耳に入れたいことがございます」