わたし 

 あっ、少し明るくなった。それに、ママが歩いている振動が伝わってくる。外を歩いているのかな? いい天気なのかな? だから、お腹の中も少し明るくなったのかな? 
 と思っていたら、見慣れた左の親指とへその緒以外に何かが見えたの。よく見ると、それは自分の右手だったの。ぼんやりと指が見えたのよ。4本? ううん、5本あったわ。指を動かしてみたら、握ったり開いたりできたの。面白くてその遊びに夢中になっちゃった。でもしばらくしたら飽きちゃったから、いつもの遊びに戻ったの。左手の親指をチューチューするのよ。でも、これは単なる遊びじゃなくて、オッパイを吸う練習でもあるんだけどね。
 あれっ? 指に吸いダコができている。ちょっと吸い過ぎかな~。これからは右手の親指と交互に吸わなくっちゃ。でも、指を吸うのも飽きたから、今日はゆっくりバク転をしてみようかな。よいしょっと。
 あれっ? 手とは違うものが見えたぞ。
 なんだこれ? もしかして足? 
 そうだ、足だ。面白~い。手を伸ばしたら掴めるかな。
 えいやっと。
 おっ、掴めた。これにも指がある。
 吸えるかな? 
 う~ん、ダメだ。ちょっと難しい。また次にしよう。でも、足を掴んだらバク転がしやすくなったぞ。
 グル~ンと。
 見事! 1回転できた。わたしは天才だ。やっぱり宇宙飛行士が一番向いているかも知れないわね。
 よしもう1回。グル~ンと。
 見事! さっきより上手にできたわ。でも、なんか息が上がってるし疲れちゃった。まだまだ体力ないのよね。
 フヮ~、
 あくびが止まらない。瞼も重くなってきた。もう限界。いい夢見てくるわね。おやすみなさい。