「また上がってる」
 新は新聞の記事を見ながら大きなため息をついた。その記事には、私立大学の授業料が7年連続で増加したことが記されていた。後ろから考子が覗き込んだ。
「初年度が入学金込みで146万円で、次年度から90万円か。結構お金がかかるのよね」
「これは平均だからね。ここを見てよ。学部ごとの授業料が載っているから」
 指差されたところを見た考子は、ヒューと口笛を吹くような声を出した。そこには医学部の授業料が載っていた。
「医学部って、1年間に266万円もかかるんだ。すご~い」
 考子はまじまじと新の顔を見た。
「そうなんだ。それが6年間続くからね。親の(すね)が細くなるわけだよ。僕がかなり(かじ)っちゃったからオヤジは大変だったと思うよ。それに奨学金もかなり借りたしね」
 医師になってからかなりの額を返済していた。毎月5万円を15年に渡って返さなければならないのだ。
「この子が大学生になる頃にはどうなっているのかしら?」
「僕のように私立の医学部に行くようになったらかなりの額が必要だから、今からコツコツ貯めておかないとね」
「それに、子供はもう一人欲しいから、2人分貯めるとなると……」
 2人は顔を見合わせて、肺が空っぽになるくらいの息を吐いた。