きこさんに本を借りてから、一週間が経った日。
俺はいつものように自転車をこいで、本屋に向かった。
本屋に入ると、きこさんが新しく入荷された本たちを棚に並べていた。
「きこさん、一週間ぶりですね」
俺は少し小さい声で、きこさんを呼んだ。
すると、きこさんはぱっと振り返り、
「あ、そうまくん!一週間ぶり。どう?本は読めた?」
と、明るい笑顔で訊ねてきた。
「はい。すっごくおもしろかったです!後で語りたいぐらい」
「でしょ!お店の中だとこんな感じで話さなきゃいけないし、出て話そう」
そう言って外に出るきこさんの後に続く。
「きこさん、お仕事大丈夫なんですか?」
「うん。ちょうど休憩だから」
きこさんはお店の中だと小さな声でゆっくり話せないからと、外のベンチに腰掛けた。そして、丸くて大きいおにぎりを二つ、膝の上に出す。
私ちょっと食べながら話してもいい?と訊かれ、もちろん、と返した。
「その本、結構難しかったでしょ?一つひとつの事件が深いし、登場人物もころころ変わるし」
「確かにそうですね…。でも、結局犯人は主人公の妹だった、っていうのはわかりましたよ。時間はそれなりにかかっちゃったけど」
「すごいね!私全然わからなかったよ。何度も読み返してやっとだったな」
本の話に花を咲かせていたところ、ふと、おすすめメモのことを思い出した。
「そういえば、おすすめメモって、きこさんがあの時とっさに書いたんですか?」
おにぎりを食べ終えたきこさんが、ラップを丸めてベンチの横にある自販機のそのまた横にある錆びたくずかごに捨てた。
「そうだよ。あ、それあげるよ!私に返されても、きっと捨てちゃうだけだろうから」
「じゃあ、ありがたく貰います…!」
店の中に入ると、きこさんはまた走って行ってしまった。次の本だろうか。
「はい!今度はこれ!」
可愛らしいイラストが表紙に施されている、一冊の本を渡される。
まるみのあるフォントで、「ヨウコとタケコ」と書かれている。書いたのは、「まじかるばなな」という名前の小説家らしい。
「これは、極端に表紙が可愛くて買っちゃったんだ。でも、すごくおもしろかったんだよ!」
ニコッと微笑むきこさんにつられて、俺も微笑んでしまう。
「へぇ。ざっくり言うと、どんな本なんですか?」
「うーん…。シェアハウスしてる二人の女の子の物語。優しくて、あったかくて、ほのぼのしてる。読んでてすごく癒されるよ」
こういった本はあまり読まないので、とても興味深いと思った。
「じゃあ、読んできますね。ありがとうございます。お仕事、頑張って」
「うん!こちらこそ、またね!」
その晩、俺はおすすめメモを読んで寝た。
借りた小説よりも先に、おすすめメモの方が読みたい気がした。
俺はいつものように自転車をこいで、本屋に向かった。
本屋に入ると、きこさんが新しく入荷された本たちを棚に並べていた。
「きこさん、一週間ぶりですね」
俺は少し小さい声で、きこさんを呼んだ。
すると、きこさんはぱっと振り返り、
「あ、そうまくん!一週間ぶり。どう?本は読めた?」
と、明るい笑顔で訊ねてきた。
「はい。すっごくおもしろかったです!後で語りたいぐらい」
「でしょ!お店の中だとこんな感じで話さなきゃいけないし、出て話そう」
そう言って外に出るきこさんの後に続く。
「きこさん、お仕事大丈夫なんですか?」
「うん。ちょうど休憩だから」
きこさんはお店の中だと小さな声でゆっくり話せないからと、外のベンチに腰掛けた。そして、丸くて大きいおにぎりを二つ、膝の上に出す。
私ちょっと食べながら話してもいい?と訊かれ、もちろん、と返した。
「その本、結構難しかったでしょ?一つひとつの事件が深いし、登場人物もころころ変わるし」
「確かにそうですね…。でも、結局犯人は主人公の妹だった、っていうのはわかりましたよ。時間はそれなりにかかっちゃったけど」
「すごいね!私全然わからなかったよ。何度も読み返してやっとだったな」
本の話に花を咲かせていたところ、ふと、おすすめメモのことを思い出した。
「そういえば、おすすめメモって、きこさんがあの時とっさに書いたんですか?」
おにぎりを食べ終えたきこさんが、ラップを丸めてベンチの横にある自販機のそのまた横にある錆びたくずかごに捨てた。
「そうだよ。あ、それあげるよ!私に返されても、きっと捨てちゃうだけだろうから」
「じゃあ、ありがたく貰います…!」
店の中に入ると、きこさんはまた走って行ってしまった。次の本だろうか。
「はい!今度はこれ!」
可愛らしいイラストが表紙に施されている、一冊の本を渡される。
まるみのあるフォントで、「ヨウコとタケコ」と書かれている。書いたのは、「まじかるばなな」という名前の小説家らしい。
「これは、極端に表紙が可愛くて買っちゃったんだ。でも、すごくおもしろかったんだよ!」
ニコッと微笑むきこさんにつられて、俺も微笑んでしまう。
「へぇ。ざっくり言うと、どんな本なんですか?」
「うーん…。シェアハウスしてる二人の女の子の物語。優しくて、あったかくて、ほのぼのしてる。読んでてすごく癒されるよ」
こういった本はあまり読まないので、とても興味深いと思った。
「じゃあ、読んできますね。ありがとうございます。お仕事、頑張って」
「うん!こちらこそ、またね!」
その晩、俺はおすすめメモを読んで寝た。
借りた小説よりも先に、おすすめメモの方が読みたい気がした。