「で?この前の意味深発言の割には、全然話さねーじゃん。あれ何だったの?」
「あっ…と、それは…」
「なんだよ、余計気になるんだけど」
陽太とモールに来た今日、俺はこの間陽太にトークで送ってしまった言葉を思い出す。
「あの、きこさんの話なんだけど…」
「だろうと思った。幼馴染さんだろ?」
「うん。あのね…」
俺は、きこさんと河川敷で話した時のことを、陽太に話した。
「お前めっちゃ青春してんじゃん」
「なんか自分でも、あの時の俺は謎に浮かれてたのかもしれないって思う」
なんでそんなことになってしまったのだろうか、と思っていると、陽太がニヤッとこちらを見た。
「な、何?」
「自分でわかんねーのー?本当ー?そういう話疎すぎるんだよ、蒼真は」
「本当に何言ってるかわかんないんだけど」
「ほーら恋愛疎すぎ天然な性格も顔面も国宝級の爽やか王子蒼真くん、そういうとこですよ。女子に人気なのは、お前のそういうとこなの」
「え、陽太?本当に何の話してるの?怖いんだけど」
ま、いつでも俺を頼れよ。応援してるから。という彼の言葉の意味がやはりわからず、少しむかむかした。

陽太と遊んでから数日後、水曜日。
今回は自分が買った小説も読みたかったため、きこさんから借りたものは、ギリギリに読み終わった。
うずくまって、でもまたはいあがる。そんな主人公の夢に向かう懸命な姿は、すごくかっこよくて、きこさんが選ぶ小説には本当に感激してしまう。
俺はいつものように炎天下の中自転車をこいで、きこさんのもとへ向かった。
「きこさん、一週間ぶりですね」
「そうまくん、一週間ぶり!あ、本読み終わった?どうだった?」
「すごくおもしろかったです。タイトルの通りでした。主人公がかっこよすぎて…」
本を語りつくし、お互い満足な表情を浮かべていた時、きこさんが何かを思い出したように「あ!」と言った。
「そうだ。思い出した!私ね、そうまくんのことをお母さんに話したんだ。そしたらお母さんがそうまくんに会いたくなっちゃったみたいで、ぜひ家に来てほしいんだって。明日、ちょうどお母さんの仕事が休みなんだけど、どう?」
きこさんのお母さん…と、記憶を巡らせる。きこさんと遊んでる時も、たくさん話してくれたな、あのお母さん…。
そうなったら、俺のお母さんにも言わなくては。
「いいんですか?じゃあ、お邪魔させていただきます」
「そんなかしこまらなくていいからね、そうまくん!」
「なんかかしこまっちゃうんですよ…」
そんなことを話しながらも、明日、きこさんの家に行くことが決まった。