夏の日差しが、川の水面を反射する。
群青の空が、まぶしく輝いている。
「…暑い」
俺は何度もそう言いながら、平坦な道をのろのろと自転車で走っている。
風はなく、蒸した空気が俺に向かってきて、狂ったように汗が出る。
道の途中にある自動販売機で冷えた水を買って、俺はまた学校に向かって自転車をこいだ。

「おはよー、蒼真(そうま)。相変わらず汗だくじゃん、タオルは?」
「おはよ、陽太(ようた)。タオルは持ってる」
「なら拭けよ」
「拭く暇がない」
じゃあ今拭け、と言われ、俺より早く学校についてエアコンに当たっていたのがわかる陽太の清々しい顔が、ムカつくし、羨ましかった。
陽太は拭け拭け、とうるさかったけれど、ちゃっかり俺の頭を、わしゃわしゃと不器用に拭いてくれていた。
「ありがとう」
「お前の汗だくを見るよりマシ」
短いやりとりが続き、予鈴が鳴った。教室はいつも通りザワザワしていて、女子が何かひそひそと話しているのが見える。
「なぁ、夏休み予定ある?俺なんもねーんだけど」
前の席の陽太が、ぐるりと体の向きを変えて、俺に訊ねてきた。少しくるくるした髪の毛が揺れる。
そうだ。もう少しで夏休みなのか。
何も予定を考えていないし、きっと俺は家で本を読む毎日なんだろうな。
「いや、特にないよ」
「じゃあ、どっか行こうぜ。涼しいとこ」
どうせいつものモールだろ、と言おうとした瞬間、陽太の隣に座る石渕(いしぶち)さんが、
「ちょっと、陽太くんうるさいよ!!女子はちゃんと静かに読書してるのに、男子だって静かにしてよ、本当…!」
と、俺たちにハッキリ聞こえる声量で言ったのだ。
もしかしたら、女子がひそひそ話していたのは、男子のうるささについてだったのかもしれない。
陽太は見るからに「げ」というような顔をして、
「うるせーなー、急に大声出すなよ」
「先に喋ってたのは陽太くんでしょ!?」
「あーはいはい、ごめんて」
こんなやりとりをしつつも、なんだかんだ仲の良い二人を見ていると、微笑ましくなってくる。
ただ、これ以上石渕さんを怒らせるわけにもいかないので、
「石渕さん、ごめんね。俺も陽太を止めずに話し続けちゃってたし、迷惑だったよね。陽太もごめん」
と言った。
すると、石渕さんが
「そ、蒼真くん!いやっ、こっちこそ急に、ごめんね!」
と言って、顔が少し赤くなるのがわかった。
石渕さんが前を向くと、こっそりと、陽太が俺に話しかけてきた。
「石渕ってさ、絶対蒼真のこと好きだよな。さっきだって顔赤くしてたし」
俺はありがたいことに、整った顔立ちと優しい性格で生まれてきたらしく、女子と話す時はすぐに顔を赤くされてしまう。
もう慣れたけれど、やはりあまりいい気にはなれない。
「陽太にはそう見える?…でも」
でも俺は。