思い詰めて、(けわ)しさをのぞかせていたチヒロのまなざしが、ゆっくりと、しなるようにやわらかくなっていく。

 じっと僕の目を見つめ、そして吹っ切ったように、にこりとした表情を見せてくれた。

「うん。そうね。もう終わったことだし、悔やんでもしかたないし。ヨシくんの言うとおり、いいほうに考えなきゃだめよね」

「そうだよ。明日から夏休みだよ。めいっぱい楽しもう。さーあ、(かせ)ぎまくって遊ぶぞー」

 両手を突きあげて解放感いっぱいの声をあげた僕の横で、チヒロは目を細めながらくすくすと笑った。