それから4ヶ月後。私は菅谷くんとある美術展に来ていた。
 私と菅谷くんの前には私の描いたサッカー部の絵が飾られている。

「川崎さん、本当に賞取っちゃうんだからすごいよな」
「一番下の賞だけどね」
「十分すごいって。こうやって飾られてるんだから」

 菅谷くんは私の絵を見てくれている。

「川崎さん、今はどんな絵を描いてるの?」
「今は美坂さんの絵を描いてる姿。結構時間かかちゃったけど、そろそろ終わりそう」
「そっか。もう次に描くものは決まってる感じ?」

 菅谷くんの問いに私はつい笑ってしまった。


「丁度、昨日決まったの。次は4人揃った絵を描こうと思って」


 今、バッグの中に入っているメモ帳にはいつもの目標が書かれている。塗りつぶされた目標を抜いて2個。

・「頻発性哀愁症候群」を治すこと
・高校を無事卒業すること

 きっと病気をすぐに治すことは難しい。それでも、もう進み始めていて「いつか」その日が来るような気がしていて。
 高校だって無事卒業出来るような気がした。だってもう私は自分の味方がいることをちゃんと知っている。それだけで十分だった。


 頻発性哀愁症候群の私たちは、これからも手を繋いで勇気を出す。時間を進めていく。



「ねぇ、菅谷くん。私はまだ病気が治ったわけじゃないけれど……」



 その時、私の方を振り向いた菅谷くんと目が合った。



「今ね、寂しくないよ。菅谷くんがいるから」


 
 だから、きっと明日も私は菅谷くんの隣で笑っているんだと思う。


 fin.