鏡台で軽くメイクを済ませて、愛用していると思われるバッグにスマホと財布、ハンカチと化粧ポーチを入れる。

準備を済ませて部屋を出ると、駿ちゃんはすでに外着に着替えて待っていてくれた。

そしてすぐに私の方を向くと、可愛いと褒めてくれる。

照れて赤くなった私の左手を、駿ちゃんの右手が包む。

強すぎない力で、私が迷わないように引っ張って行ってくれる。

今日の私にとっては知らないマンション、全く見覚えのない街でも、駿ちゃんがいてくれるから安心して歩ける。

何もかもが物珍しくて、子供のように周りをキョロキョロ見渡す私を、少し先を行く恋人が優しく笑って見守る。

もうそれだけで、今日の私は十分幸せだと笑い返すと、もっともっと幸せにするよと答えが返って来た。


ーー…私は十分幸せだから、少しの違和感には気づかない振りをするんだ。