「よもぎにいちゃ~ん、りあおねえちゃ~ん。おなかすいたの~」
「あれ、金魚のお姉さんがいるの~」
「雨降り小僧の子供たち。見ない間に随分と大きくなりましたのね」
いつもの雨降り小僧の兄弟は店内に入って来ると、莉亜たちには目もくれずに金魚の元に行く。常連客同士、顔見知りなのだろう。金魚が雨降り小僧たちに気を取られているのを見計らったかのように、おひつを混ぜていた蓬がこっそり莉亜を呼ぶ。
「莉亜、この飯を味見してくれないか? 金魚の主人用に用意したものだ」
「他と違うんですか?」
「塩の量を減らしている。金魚の主人は塩分摂取量を制限しているからな。他と違って、塩を減らしている」
どうして蓬が味見しないのか気になりつつも、莉亜は言われた通りに味見をする。いつもより塩が少なく、米本来の味を強く感じたのだった。
「いつもよりしょっぱくないので、これで良いと思います」
「助かる」
すぐに蓬は金魚の主人用のおにぎりを握り始める。その間に莉亜は雨降り小僧たちに出す煎茶の用意をしようとしたところで、金魚から貰った青唐辛子の味噌がカウンターに放置されていることに気付く。その時、この味噌を味見していた蓬の姿を思い出す。
(蓬さん、平気な顔をしていたけど、辛くないのかな……)
実家に住んでいた時に莉亜も母が作る青唐辛子の味噌を使った焼きおにぎりを食べたことがあるが、ほんの少し舐めただけでも口の中がヒリヒリと焼けるような痛みが走った。水も飲んでも辛味は消えず、しばらく強烈な刺激に悶え苦しむことになった。
けれどもさっきの蓬の反応を見る限り、とても辛さに藻掻いている様子はなかった。辛くない青唐辛子の味噌もあるのだろうか。金魚も「少し辛い」と言っていたので、莉亜が想像しているより辛くないのかもしれない。それとも蓬が辛味に強いだけだろうか……。
莉亜は蓬や金魚たちが見ていないことを確認すると、ほんの少しだけ小指で掬って舐める。すると、想像を遥かに上回る青唐辛子の強烈な辛味成分に口中を支配される。のた打ち回りそうな辛さに涙が溢れてきたのであった。
(か、からっ~!?)
慌てて水道を捻って水を口にするもののそれでも口の中は未だ痺れており、涙は止まりそうになかった。とりあえず、お茶の用意をしようと涙を拭いていると、竈の火を調整しながら切り火たちが心配そうに見つめていた。莉亜は片手を上げると、大丈夫と合図をしたのだった。
(ちょっと舐めただけでこんなに辛いって……。蓬さんは平気なの!?)
涼しい顔でおにぎりの用意をする蓬の横顔を盗み見る。さっき金魚の主人用のご飯の味見を頼んできたのは口の中が辛かったからだろうか……。そんなことを考えていると、切り火のひとりが莉亜の身体によじ登ろうとする。掌を差し出すと、慣れたように切り火が飛び乗ってきたのだった。
「心配してくれてありがとう。でも大丈夫だから……」
切り火が指したのは冷蔵庫だった。そこに連れて行けということなのだろうと、莉亜は冷蔵庫の扉を開ける。切り火は冷蔵庫内に飛び乗ると、牛乳が入った瓶の前まで走って行ったのだった。
「牛乳……を飲めばいいの?」
切り火が何度も頷いたので、莉亜は牛乳を取り出して蓋を開けるとコップに注いで呷る。まだ少し残るものの、口の中を刺すような刺激が鳴りを潜めたのだった。
再度切り火に礼を言おうとするが、いつの間にか竈に戻ってしまったようで姿を見つけられなかった。その代わりに金魚から代金を受け取る蓬の目を盗んで、調味料棚を悪戯するハルの姿を見つけたのだった。
「ハル、駄目よ! 悪戯したらっ!」
莉亜は調味料棚に近づくと、ハルを引き離そうと身体を持ち上げる。しかしその際にハルの尻尾が当たってしまったのか、調味料棚に置いていた塩や砂糖などが調理台や床に中身をまき散らしながらひっくり返ってしまったのだった。
「ああっ!」
ハルを床に下ろすと、すぐに調味料棚を元通りに直して、雑巾で調理台を拭き始める。すると、蓬が「どうした!?」と血相を変えて戻ってきたのだった。
「すみません。目を離した隙にハルが調味料棚を悪戯してひっくり返ってしまって……」
「ここは俺が片付ける。お前はハルを外に出してくれ」
莉亜は店内を隈なく探して座敷席の下で丸くなっていたハルを見つけると、店の外に連れて行く。戻った時には蓬は雨降り小僧たちに煎茶を出して、味噌汁を仕上げているところであった。
「ところで蓬さんは辛い物が平気なんですか?」
「何故だ」
「さっき金魚さんからいただいた青唐辛子の味噌を味見していましたよね。あれ、少し食べただけでもとても辛かったのですが……。牛乳を飲まなくても平気なんですか?」
その言葉に蓬は鍋を混ぜる手を止めると大きく目を見開く。何度か瞬きを繰り返すと、「そうだな……」と小声で話し始めたのだった。
「辛い物は……平気だな」
「そうですか。でも無理しないでくださいね。さっき青唐辛子の辛さに悶えていたら、切り火ちゃんに牛乳を飲むように勧められたんです」
「そうさせてもらおう」
莉亜と話しながらも、蓬は調味料棚から塩を取り出して味噌汁を整える。お玉でかき混ぜた後、小皿によそって味噌汁を味見していた。
どうやら今日の具材は絹豆腐と油揚げの味噌汁らしい。見ているだけで莉亜のお腹が鳴りそうになる。そこに追加の米が炊けたのか、蓬は鍋の火を消すと竈に向かったのだった。
その背には後ろめたいことがあるのか、隠したいことがあるのか、どことなくいつもと違う雰囲気が漂っているような気がしてしまう。
――意図的に話を逸らされたような、何とも言えない気持ちになったのだった。
気になるものの、また新しい客が入店して忙しくなってしまったので、結局この時はそれ以上の追及が出来なかった。
「ねぇねぇ、りあおねえちゃん」
それから少しして他の客の対応をしていると。おにぎりを食べていた雨降り小僧たちに声を掛けられる。
「どうしたの?」
「きょうのおみそしる、へんなあじがするの」
「味噌汁?」
雨降り小僧から味噌汁のお椀を見せてもらうが、特におかしなところは無かった。匂いにも違和感はなく、腐っている様子はない。具材の豆腐と油揚げにも異常は無さそうだった。
「なんだろう……。蓬さんに聞いてくるね」
「おい、なんだ! この味噌汁は!? とても食えたものじゃないぞっ!」
店内を満たような怒号に莉亜は顔を上げる。カウンター席では初めて来店したと思しき鼠の姿をした年配の男性が蓬に詰め寄っていた。
「変というのは?」
「あんこ餅のように甘ったるくてとても食べられたもんじゃない! 食ってみろ!」
「あ、ああ……」
緊張しているのか委縮したように蓬はぎこちない動きで味噌汁を小皿によそうと、言われた通りに味を確かめる。すぐに何か言うだろうと莉亜も様子を見ていたが、蓬は小皿から口を離しても、青白い顔を強張らせたまま無言で固まっていたのだった。
(蓬さん……?)
その間も男性は勝ち誇った顔と共に「どうだ? おかしいだろう!」と蓬に詰め寄り、味噌汁を飲んだ他の客も「本当だ」、「味がおかしいわ……」と小波のように騒ぎ出したのだった。
「蓬さん!」
この状況に居ても立っても居られず、カウンターに戻った莉亜は小声で声を掛ける。放心していて莉亜の声に気付かなかったのか、蓬は少し経ってから「あ、ああ……」と力ない返事をしたのだった。
「雨降り小僧ちゃんたちも言っていました。今日の味噌汁は味がおかしいって」
「そうか……」
いつもの蓬とは違って、言葉尻が弱く、今にも項垂れそうな様子に莉亜の焦りはますます募ってくる。
今日の蓬はどこか変だ。このままにしてはいけない。そう考えた時には声を掛けていた。
「私も味見してもいいですか?」
「頼む……」
弱弱しい蓬に変わって、味噌汁を小皿によそって口にする。口に入れてすぐその原因に気付き、危うく吹き出しそうになったのだった。
「な、なにこれっ!? あまっ! お汁粉みたい!」
砂糖を入れ過ぎたような菓子のように甘ったるい味噌汁に莉亜も口を押さえてしまう。そんな莉亜の様子に、鼠も満足そうに鼻を鳴らしたのだった。
「ほら見ろ。そこのお嬢ちゃんの言った通りだろう!! こんなに甘ったるい味噌汁なんて食べられるか! 美味い店だと噂に聞いて来たが無駄足だった!」
男性は吐き捨てるように言って乱暴に代金をカウンターに置くと、息も荒く、店を出て行ってしまう。その後、店内は水を打ったように静まり返っていたが、やがて他の客も徐々に帰り支度を始める。その中には常連客もいたので、莉亜は代わりのものを用意すると引き止めるが、今日は蓬の体調が良くないようだからと、丁重に断られてしまったのだった。
莉亜が会計をしている間も、蓬は顔面蒼白のまま直立不動でいた。いつの間にか店内に戻ってきたハルが慰めるように足元をうろつき、切り火たちが社から顔を出しているものの、蓬は気づいていないようだった。そんな蓬を心配しつつも、莉亜は客の相手や後片付けを続けたのだった。
ようやく蓬がショックから立ち直ったのは、本日最後の客となった雨降り小僧たちが帰った後であった。雨降り小僧たちが使ったテーブルを片付けていると、蓬が暖簾を外して店内に戻ってきたところだった。
「今日はもう閉めるんですか?」
「誰も来ないだろう。さすがに今日は」
暖簾を片付けると、蓬はカウンター席に座って大きく息を吐き出す。どんなに店が混んでも、忙しくても疲れた様子を今まで見せなかった蓬にしては珍しい姿だった。さすがに今日は心身共に堪えたのだろう。
「すみません。きっと私が原因ですよね」
「何故、お前が?」
「さっきハルが調味料棚を悪戯した時によく見ないで棚に戻したから……。その後、蓬さんが味噌汁を作った際に間違えてしまったんですよね」
思い出せば、ハルが調味料棚を悪戯した後、莉亜はよく元の場所を確かめもせずに適当に調味料を戻してしまった。特に塩と砂糖は同じ形状の調味料ケースに入れているので、逆に戻してしまったのかもしれない。その後、蓬が味噌汁を作る際に塩と間違えて砂糖を入れてしまったのなら合点がいく。
莉亜は肩を落として、再度謝罪の言葉を口にするが、蓬は顔を背けたまま静かに否定する。
「……いいや。お前やハルが原因じゃない。遅かれ早かれ、いずれはこうなっていたんだ」
「それはどういうことですか……?」
「お前も今日はもう帰った方が良い。俺も竈と調理台の片付けをしたら休む。……迷惑を掛けたな」
蓬は立ち上がると、竈の後始末に行ってしまう。足取りもふらつき、力ない様子にこのまま帰っていいのか迷ってしまう。他の客の言う通り、今日は調子が悪いだけかもしれない。それなら早く休ませるためにも、そっとしておいた方がいい。元気になったら、元の蓬に戻るだろう。でも――。
(本当にこのまま帰っていいの?)
今の蓬はとても放っておいていいような雰囲気ではない。脆く儚く、今にも崩れてしまいそうな砂の城のように思えてしまう。
それに塩を入れ間違えたという甘い味噌汁は蓬も味見していた。ハルが調味料棚を悪戯した時と鼠の男性に指摘された後の二回。
最初に飲んだ時に気付いたのなら、その時点で味を直しただろう。鼠姿の男性に言われた時もすぐに謝罪しただろう。莉亜でさえ一口飲んであの強烈な甘さに気付けたのだから。
あそこまで味がおかしければ、誰だって気付くだろう。例えば、病気などで味覚が異常|じゃない限りは――。
(まさか……)
そこまで考えて、莉亜はハッと顔を上げる。金魚から貰った青唐辛子の味噌を舐めていた時から蓬に感じていた違和感。それなら金魚の主人用のご飯の味見を頼まれたのも納得できる。あの時は青唐辛子の辛さで味覚が正常に働かないからだと思っていた。けれども、そうじゃなかったとしたら……?
莉亜は冷蔵庫を開けると、あるものを取り出す。そして自分のトートバッグを取りに行くと、コンビニエンスストアの白いビニール袋を取り出したのだった。
「蓬さん、もう竈の片付けは終ったんですか?」
「お前、まだ残っていたのか……」
「はい。今日は差し入れを持って来ていたんです。お店を閉めたら一緒に食べようと思って」
莉亜はカウンターにコンビニエンスストアで買った大ぶりのシュークリームを載せた白い皿と、黒々とした飲み物を淹れた黒い湯呑みを置く。シュークリームは店に来る前、牛鬼に渡すおにぎりと一緒に購入したものだった。今日は早くお店に来られそうだったので、開店前に蓬と食べようと思い、二個購入した。
それを皿に盛り付け、店にあった紅茶を勝手に淹れさせてもらったのだった。
「棚にあった紅茶も勝手にいただいてしまいました。やっぱりシュークリームのような洋菓子には紅茶だと思ったので」
「せっかく用意してもらったところ悪いが、今は何も食べたい気分じゃない」
「疲れた時は甘いものが一番です。紅茶だけでも飲んでください。砂糖を入れて甘くしたので」
莉亜が笑みを浮かべて進めると、根負けしたのか蓬は渋々カウンター席に着くと紅茶を手にする。一口飲んだ蓬はそっと息を吐いたようだった。
「お前の言う通りだな。これを飲んであれから何も口にしていなかったのを思い出した。甘いものは良いな。心が落ち着く」
「それ、本当に甘い紅茶ですか?」
「どういうことだ?」
「実は蓬さんが飲んだものは醤油をお湯で溶いたものなんです。塩と粉末出汁も入れてスープ風にしてみました。甘いシュークリームを食べた後は、しょっぱいものが欲しくなると思ったので」
その言葉に蓬の表情が固まる。喉の辺りを軽く押さえて、動揺を隠そうとしているようであった。そんな蓬の様子に気付いていない振りをしつつ、莉亜は話しを続ける。
「最初から醤油だと言ったら飲んでもらえなさそうだったので、嘘をついてしまいました。黒い湯呑みだと、見た目から中身が判断できないですよね」
「そうだな。確かに薄っすらと醤油の味がするな……」
「そんなわけないじゃないですか。いくらしょっぱいものが欲しくなるとしても、醤油を飲ませたりしません。中身は紅茶です。レモン果汁くらいは淹れましたが」
わざわざ黒い湯呑みを選んで紅茶を淹れたのも、見た目から蓬に判断させないためであった。
他の湯呑みで出してしまうと、紅茶の琥珀色から中身が気付かれてしまう。けれども内側も黒い湯呑みなら、見た目から判断されない。なるべく匂いがしない茶葉を選んだので、口にしない限り紅茶だと分からないだろう。
その代わり、一口飲んだのなら、どんなに莉亜が醤油だと言っても、紅茶と醤油の違いに気付かれる。味が全く違うのだから。それこそさっきの甘い味噌汁と同じくらいに。
それも全て――蓬の味覚が正常ならば、の話だが。
「ということで、シュークリームも食べてください。せっかく買ってきたので。こっちは何も手を加えていません」
「……いただこう」
先程の紅茶の件を気にしているのか、蓬は舐めるようにシュークリームを観察していた。そんな蓬に苦笑しながら、莉亜も自分のシュークリームを食べる。今日の疲れも吹き飛ぶような、カスタードクリームの濃厚な甘さに身体中が満たされる。
莉亜が先にシュークリームを食べたことで警戒心が解けたのか、ようやく蓬もシュークリームを食べ始める。その様子を見ながら唇についたカスタードクリームを舐めると、莉亜は話しを続ける。
「どうですか?」
「人の世に何度か足を運んだ際に食したが、同じ見た目でも作り手によって皮も中身も違うな」
「シュークリームを食べたことがあったんですね」
「長く生きていれば当然だ」
「それなのに……そのシュークリームを変とは思わないんですね」
「なんだと……?」
莉亜は蓬からシュークリームを受け取ると、包丁を取り出して二つに割る。そして割かれた断面から現れたシュークリームの中身に、蓬は絶句したようだ。片手で顔を押さえながら、唸るような低い声を発したのだった。
「これにも仕掛けがされていたのか……。迂闊だった」
蓬に出したシュークリームには、先程金魚から貰った青唐辛子を大量に練り込んでいた。
莉亜が少し舐めただけで涙が溢れてきたのだから、きっと蓬も青唐辛子の辛さに耐えられず、文句の一つも言うだろうと思っていた。
けれども、蓬は何も言わなかった。醤油と騙して飲ませた紅茶も、青唐辛子の味噌を入れたシュークリームも。これが答えなのだ。
蓬は味覚を失っている。料理人としては致命的にして、最上の武器を。
「すみません。でも確かめたかったんです。もしかしたら蓬さんは特定の味だけ分からないんじゃないかって。それで試させてもらいました。紅茶とシュークリームに細工をすることで、口に入れた時に気付いてくれるかどうか……」
「それで紅茶を醤油と偽り、シュークリームに味噌を混ぜたわけか」
「それでもこっちは食べる前に気付かれたらどうしようって、心配だったんですよ。渋い紅茶を抽出しようと茶葉を多めに使ったら、あまり香りがしない茶葉なのに、予想外に強くなってしまって……。もしかしたら飲む前に匂いで気付かれてしまうかもって。そうしたらシュークリームも怪しまれて食べてもらえないから、何か手を打たなきゃって……」
既に紅茶を飲ませた時に醤油と嘘をついて騙しているので、きっと蓬はシュークリームを怪しんで、食べずに二つに割いてしてしまうかもしれない。実際に蓬はシュークリームを訝しんで、なかなか食べようとしなかった。いつシュークリームの裏から注入した青唐辛子の味噌に気付かれてしまうか、内心では冷や汗が流れそうであった。
そこで莉亜が何も仕込んでいない自分の分のシュークリームを食べてみせることで、このシュークリームには何にも細工をしていないと蓬に思わせて油断を誘った。蓬は莉亜の思惑通りにシュークリームを食べて、そして何ともないような顔をしていた。
その瞬間、莉亜の予想は的中したと同時に落胆もした。――もしかすると、心のどこかでは信じたくなかったのかもしれない。
「……いつから気付いていた?」
「最初は金魚さんから貰った青唐辛子を味見している姿を見た時でした。でもその時は辛い食べ物が平気なだけだと思っていました。確信に変わったのは、さっきの味噌汁の騒動の時です。みんなが甘い味噌汁だと騒いでいるのに、蓬さんだけ何も感じていなさそうだったので……」
味覚の基本味は全部で五種類。甘味、酸味、塩味、苦味、旨味とされている。痛覚で感じる辛味、触覚の一種とされている渋味など、舌で感じない味は含まれない。
この内、味噌汁に間違えて使われた砂糖の甘味、金魚の主人用に用意した塩分控えめのご飯の味見を莉亜にさせたことから塩味が機能していないのは分かった。
残る味覚の内、わざと濃い目に淹れた紅茶の苦味、紅茶に淹れたレモンの酸味も感じていないことも判明した。そして紅茶を醤油と偽った時に区別がつかなかったところから、おそらく出汁から抽出される旨味も知覚していないのだろう。
ついでに青唐辛子の味噌が分からなかったことから辛味も。
蓬の味覚は全く機能しておらず、何も味を感じられていないことが、これで明瞭になったのだった。
「そうだな。あの時は俺も返答に窮して、何を言えばいいか迷った。味が分からなかったから、肯定も否定も出来ずにいた。……お前が代わりに味を教えてくれて、本当に助かった」
「いつから味を感じられなくなったんですか?」
「お前がこの店に通い始めた頃だ。それまでは、まだかろうじて感じられる味があったのだがな。今では何も感じられない……。水のような、無味の固形物を食っているような気分だ」
「それなのにお店を続けていたんですか……。休まないでずっと……」
「俺にはずっと待っている奴がいる。ソイツに借りたままのものがある。それを返すまで、俺はこの店を続けなければならない」
初めてここに来た時も、蓬は誰かを待っているような話をしていた。それは道標のように植えられた外の花忍も現している。
大切な人が迷わずここに来るのを、蓬はずっと待っているのだと。
「もし待っている人がいたとしても、それで蓬さんが苦しんだら意味は無いと思います」
「これも俺の運命だ。罪を犯した俺に課せられた神罰なのだろう。アイツが現れるまで、ここでアイツから借りたものを守り続けること。それが俺に出来る、唯一の贖罪だ」
罪と贖罪の二文字が面倒見の良い蓬と結びつかず、頭に入ってこない。声も掠れてすぐには出てこず、紅茶で口の中を濡らすことで、ようやく言葉に出来たのだった。
「何か罪を犯してしまったんですか?」
「神といえども、常に正しいとは限らない。時には判断を誤り、罪過を犯すこともある。個の感情から取り返しのつかないことをして、大切な友を永遠に失うことも……」
「友……」
「少し長い話になるが、聞いてくれるか? 神として風前の灯火である俺の代わりに覚えていて欲しい。かつてこの地に祀られていた豊穣の神が友と認めた唯一の人間のことを」
そうして蓬は滔々と話し始める。
人と神の出会いと別れの物語を――。
莉亜が生きる時代から遥かな昔。外つ国から押し寄せた近代化の波が入り乱れ、文明開化の風が吹き始めた時世。
神域に繋がる公園はまだ存在せず、代わりに古の時代よりこの地を見守り続けてきた神社が建っていた。
祀られている神はこの地の五穀豊穣や商売繁盛を司る豊穣の神。毎年春の祈年祭と秋の新嘗祭には祈りと感謝を捧げに多くの地域住民が参拝に訪れるという、地元民から愛される神であった。そんな住民の祈願に答えるように、豊穣の神はその土地の農作物に実りを与え、旅人や商売人が自然と立ち寄るような賑わいを栄えさせた。
そんな神には一つだけ問題があった。それは清き乙女が捧げる四つの供物――神酒、米、水、塩しか受け取らないというものであった。
地元で醸造された清酒とその年に収穫された新米、神社の神域に湧く清き湧き水、そして不浄を滅するとされている新鮮な塩。
この四種類を、神社を管理する宮司の一族が毎日奉納することになっていたが、この豊穣の神は未婚の乙女が差し出す神饌しか断固として受け取らないと言われていた。そして豊穣の神が神饌を受け取らない限り、この地を守護する神の神力は衰退し続けて、やがてこの土地から神の加護は消滅するとも――。
神の加護が散じた土地では、疫病や災害が発生する。川は濁って植物は育たず、人や動物たちは病苦にもがき、やがてこの地を離れる。人や動物がいなくなった地には誰も住まなくなると言われていたのだった。
この地に生きる人たちのため、豊穣の神を祀る神社と豊穣の神の座す本殿が建立された時から、豊穣の神に神饌を捧げる役目は、宮司一族の清き乙女が担い続けていた。
本来であれば神として人々に祀られている以上、神はその土地を守護し、人々が豊かに安全な生活を送れるようにしなければならない。
それをこの地を加護する豊穣の神は長らく放置していた。清き乙女が神饌を捧げないからという身勝手な理由だけで――。
この時も豊穣の神は年季の入った木造の本殿に供物を持ち込む者を木の上から眺めていた。
永遠に近い時間を生きる神と、限られた一瞬しか生きられない人では生きている時間が違う。神にとっての清き乙女というのは、流れ星のように瞬きする間に次々と変わる存在であった。
それが数十年前からは清き乙女ではなく、むさ苦しい男たちが供物を寄進するようになった。当然、神はそんな汚らわしい男たちからの供物を黙殺し続けた。
例え、その年の農作物が凶作で商売が傾き、本殿に向かって地元の有力者たちが坐して、祝詞を唱えられたとしても。
処女が神饌を奉納しない限り、この地の豊穣を司る神は一切応えないつもりであった。
あの日、声を掛けられるまでは――。
「そこに居るのだろう? 出てきたらどうだ」
その男は神が隠れていた木を真っ直ぐに見上げたかと思うと、よく通る澄んだ低い声音を尖らせながら話し掛けてきた。
年の頃は二十代の長身の男であり、黒い学生服と学校の校章と思しき模様が帽章に刻印された座布団型の学生帽を被った書生であった。
その男には見覚えがあった。数年前から老いた父親の跡を継いで、神に奉納する役割を担うようになった宮司の一族であった。あの頃はまだ青二才の坊主頭だったが、神が等閑している間に成長したらしい。毎朝の鍛錬の賜物なのか、初めて本殿に来た時のひよっこは鳴りを潜め、鍛えられた体躯をしていた。
神を祀る神社に暮らす宮司一族の男は、家訓なのか必ず武術を修練することになっているようで、基本的に男は皆軍人顔負けに体格が良い。
彼らは毎日陽が昇る前から習練を始めるようで、早朝の厳かな空気を切り裂くような練磨の声が本殿まで響き渡っていた。神は鬱陶しい気持ちで、長年習練の様子を見てきたが、その中でも特にこの男は宮司である父親が最も手塩にかけて武術を教え込んでいたように思う。
兄弟の中でも特に脆弱で、幼少期は虚弱体質だったというのもあるだろう。物心がつくまでは連日のように体調を崩して、布団で伏せっているところを見かけていた。それもあって父親も厳しく稽古をつけたに違いない。その結果、体力がついたのか、小学校に入る頃には風邪一つ引かない健康優良児になった。その後も鍛錬を続け、細身の身体つきながらも、現在の屈強な男に成長したのだろう。
衣服で着痩せするのか、体格からの威圧感はない。引き締まった身体に加えて、凛々しい顔つきの中に未だ少年のような愛嬌があるからか、美丈夫の部類に入るかもしれない。
そのため、こうして睨まれても凄みは感じられず、ただ神を認識できる純粋無垢な幼子に見つめられているようなこそばゆい気持ちにさせられただけであった。
「聞こえていないのか。いつもそこから様子を伺っているのは知っているのだぞ。無視をするなら、おれがそっちに行く」
男は靴を脱いで裸足になると、帽子と共に放り投げる。助走を付けて幹を踏み台にすると、一番下の太い枝を掴んだのだった。そのまま弾みをつけて枝に乗ると、更に上の枝に手を掛ける。その間も枝葉は大きくしなり、数枚の葉が地面に落ちていた。枝が軋む嫌な音が聞こえてくるが、男は全く気付いていないようだった。神は呆れると、木から降りて宙を飛ぶ。神力の消耗を節約して、白く光る球体姿となっていた神には造作もないことであった。音もなく地面に降りると、木の上で悪戦苦闘していた男に声を掛ける。
「こっちだ。宮司の嗣子」
「……っ!?」
男が木から飛び降りた瞬間、支え切れなくなったのか、一番下の枝が根元から折れてしまう。鈍い音を立てて地面に倒れると、辺りに砂埃を撒き散らす。枝の下敷きになるのを回避した男は舞い散る粉塵に咳き込んでいる間、枝が落下した衝撃で、近くの木々に留まっていた鳥たちが一斉に羽ばたいたのだった。
「危ないところだった。お前が教えてくれたのか」
「教えたつもりはない。用が終わったのなら、疾く去ね」
「待て。おれはお前と話がしたいのだ」
「男と交わす言葉は無い」
「釣れないことを言うな。この地を守護してきたお前は知っているだろう。おれの曽祖父の代から宮司の家系には男しか生まれていない。お前が清浄な婦女子が供えた神饌しか受け取らないことを知っている。だがこの状態が続けば、この地の護りはおろか、お前自身も力を失って消滅してしまうのではないか。今も只人には見えない霊のような存在となっているのだろう」
男の言う通り、長らく神饌を受け取って来なかったことで、神が持つ力――神力は徐々に衰えつつあった。今はまだ宮司一族や地元民からの信仰で、どうにか神としての姿を保っていられるが、それも長くは持たない。このまま神饌を受け取らなければ、いずれは跡形もなく消えてしまうだろう。
神が起こす数々の奇跡の本源である神力の源は、人間からの信仰と毎日供される神饌とされている。
人間に忘れられて信仰を失い、それに伴い供物が饗されなくなった神は、次第に神力が衰えていく。水が入った袋に小さな穴が開けられた時のように、少しずつ身体から神力が流れ出て行き、最後は心身共に霧散する。
人が変わり、時代が移ろえば、人と神の関係も変わる。長らく周辺との交流を閉ざしていたこの国が、艦船の来航によって門戸を開いた時のように。いずれの日にか諸外国の文化や見識がこの国に深く浸透した暁には神代から続く神と人の関係性は見直され、やがて両者は希薄になるだろう。神々に対する人の信仰は減っていき、何百年後には神の存在共々塵芥となって世界から忘失する。
この地を護る神にとっての潮時が今だった。ただそれだけのことである。
「キサマには見えるのだな。この姿が」
「お前が思っているのとは違うかもしれないが。おれには蛍のように見えている。夜半、近くにいてくれたら丁度良さそうな光明だ」
「神を何だと思っている。それでも宮司の倅か」
「宮司の倅だからこそ、お前のことは一番分かっているつもりだ。暇そうに拝殿を覗きに来ていることも、伏せっていた幼きおれの見舞いに来てくれていたのもな」
「見舞いではない。キサマが寝込む度に親兄弟がここに快癒の頼みに来るから、気になって様子を見に行っていただけだ。今回はそこまで深刻なのかと」
この男が幼い頃、病に倒れる度に宮司である男の両親や男の兄たちが交互に本殿を訪れては、快復を神頼みしてきた。豊穣の神には病気快癒の力を持っていないので、そのような願い事をされても困惑するだけなのだが、毎度深刻そうな姿が気掛かりだったこともあり、男が眠る部屋に様子を見に行っていた。
世代を重ねる事に宮司や神主であっても、神やあやかしの存在を視認できる者が減っていた。この男もそうなのだろうと思っていたが、どうやら違ったらしい。神の姿を見たという者は数百年ぶりだったからか、あまり悪い気はしなかった。
「だが、お前のおかげでおれはこうして立派に成長できたのだ。病で伏せるおれの周囲を飛んでいただろう。蛍か不知火のように。この家に生まれていなかったら、とうとうその時が来たのだと勘違いするところだったぞ」
「失礼なことを言うな。様子を見に行っただけで何もしていない。快癒したのはキサマ自身の力だ」
「それでも病の苦しみと戦うおれにとっては一筋の光も同然だった。そんなお前に恩を返したいと思ったからこそ、神饌を捧げる役目を兄上たちから譲り受けたのだ。それなのにお前は頑なに婦女子が捧げた神饌でなければ受け取らぬという。男が捧げる神饌の何が気に入らないのだ」
「答える義理はない」
「おれはお前が心配なのだ。もしお前の力が弱まった原因がおれにあったとしたら、千古よりこの地で宮司を務めてきた先祖たちに顔向けが出来ない。この地で生きる者たちにも……。ここ数年不作が続き、商売も上手くいかぬ。この状態が続けば、いずれ人が離れ、誰も住む者がいない荒野となってしまう。そうなってからでは遅い。お前には力を取り戻して欲しい。かつての実りと豊かさを取り戻してくれないか。そのためなら、おれに出来ることは何でもしよう」
「何度も言わせるつもりか。キサマは何も関係ない。男が捧げる神饌を受け取らないのは美味くないからだ。食には質や見栄え以外に作り手も関係する。清らかな処女が手ずから用意したものなら味も信用に値するが、汚らしい男どもが用意したものなど、どんな味がするのか食えたものではない」
「衛生を心配しているのか。それなら神饌を用意する前には、必ず神社の神域から湧き出る清水で身体を清めている。我が家に代々伝わる古文書の内容に従っているぞ」
「不衛生という意味ではない。いや、それも大事だがそうではない! 邪心の権化とも言える飢えた獣以下の男に処女が用意する神饌以上の美味いものは用意できないと言っている」
「つまり、おれがこれまでお前に仕えてきた婦女子より美味なるものを用意できればいいのだな」
「そういう意味ではない!」
「お前は最初に言ったな。食には質や見栄え以外にも作り手が関係すると。婦女子が調理したから美味、男が調理したから不味とは限らない。これからの時代、そういった先入観は改めるべきだ。おれがそれを変えてやる」
男はそう宣言すると、靴を履いて帽子を被る。決意したかのように足早に去って行く男の背を見ながら神は独り言ちたのだった。
「何をしても無駄だ。考えが変わるわけがない。どうせアイツもすぐに諦めるだろう」
そんな神の目論みこそすぐに外れることになる。それは翌日の出来事であった。
「おい。今日もそこにいるのだろう」
木の上にいた神はそんな男の呼び掛けで下を覗き込む。昨日の男が竹包と竹筒を手に立っていたのであった。
「神饌を持って来なかったということは諦めたということか」
「これが神饌だ。食してみろ」
男は本殿の前に竹包を供えると竹包みを綴じる竹紐を解く。竹包の中からは塩で握ったと思しき三角形のおにぎりが二個現れた。
「これは?」
「見ての通り、おれの手作りむすびだ。神饌に使っている米、清水、塩で握っている。神酒はこの竹筒の中だ」
そうして男は腰にぶら下げていた巾着から布包みを取り出したかと思うと、塩らしき白く細かい結晶状のものをおにぎりに振りかける。仕上げのつもりなのだろう。男の手から降り注ぐ塩の雨が陽光を反射して光り輝いていた。
「握り飯なのは赤子でも分かる。だが何故握り飯なのだ。いつもの神饌はどうした」
「昨日言った通りだ。あの後帰宅して古文書を読み直したが、神饌については必ずしも生饌でなければならないという記述は無かった。父上に聞いても同じ答えだ。それなら熟饌でもいいかと思ってな。いつも供している神饌を使って塩むすびを作ってみた。長い間同じものを渡されたら、さすがに神でも飽きるだろう」
神によっては神饌には素材をそのまま出す生饌に加えて、調理をした熟饌を好むものもいる。この地の神に関しては清酒、新米、清水、塩の四種類が揃っているのなら神饌にこだわりは無かった。それを捧げるのが清き乙女であれば。
「母上に作り方を教わったから味は確かだ。味見をしに来た父上や兄上たちにも概ね好評だったからな」
「身内の評価が入っている時点で当てに出来そうにないが……」
「文句は実食してから言え」
「この姿で食えると思っているのか?」
男の期待するような眼差しから逃れようと、神は適当な理由をでっち上げる。いつも神饌を食す時は人型である神の姿を取る。その方がじっくり神饌を味わえるからだ。だがどうしても自分の神としての姿をむさ苦しい男どもに見せたくなかった。
神饌と同じで相手が清き乙女なら躊躇うことはなかっただろう。汚らしい男どものために、わざわざ神力を消耗してまで姿を現すのが億劫だった。
「まあいい。そこに置いていけ。後で食す」
「これまでの神饌のように、明くる日も手付かずで残っているというのは無しだからな。神だからと言って神饌を粗末に扱っていいわけがない。清水はいいかもしれないが、米を作る農家、酒を醸造する杜氏、そして塩を製造する塩職人の苦労を蔑ろにするのは良くないと常々思っていたのだ」
「神に説教をするつもりか。それならその握り飯はキサマが持ち帰って食すがいい」
「これはお前の神饌だ。おれが食らうわけにはいかない。それにおれはお前が神だから説教をしているわけではない」
「神じゃないなら何だというのだ」
「友だ。太古の昔、神々と人間は深い信頼関係で結ばれていたと聞いている。信頼関係というのは友情も同然。おれはお前に仕えると同時に、お前を理解する最も近い友でありたいと思っている」
男があっけらかんと述べた言葉に神は魂消てしまう。
神に向かって、この男は友情を育みたいと言った。神と人の関係性が希薄になっているこの文明開化の世に。
この男は余程のおめでたい頭をしているのか、それとも怖いもの知らずと言える。
「神を友として対等な関係を築きたいというのか。あまりに馬鹿げている。キサマは宮司の嗣子でありながら、神を敬うということを知らないようだ」
「お前が敬われたいのならそうしてやる。これまでお前に仕えてきた女人たちと同じように。地に這いつくばって、額を擦りつけよう。それでお前の気が済むのなら、おれに出来ることなら何でもする。だが、お前はそれで本当に満足なのか」
「なんだと……」
「神々の間での関係性がどうなっているのかは知らないが、敬うというのは一種の主従関係だ。おれには学友や同胞といった対等で結ばれた横の繋がりがある。だが、お前には胸襟を開ける友や、全てをさらけ出してもいいと思える相手はいるのか? 心を許し、本音を語れる者はいるのか? お前が頑なに清き女人の神饌しか受け取らないのも、そこに理由があるのでないか。誰かに自分の心に深く踏み込んで触れてほしいという真の想いが……」
「詮索は不要だ! 天罰が下る前に早く消えるがいい!」
神の怒声に虚を突かれたのか、男はたじろぐと喉元に触れる。表情を見られたくないのか、顔を隠すように学生帽を被り直したのだった。
「……また来る」
男は去って行くが、その背はいつもと違って意気消沈しているようだった。無理もない。神がにべもなく男が差し出した手を払いのけたのだから。
咄嗟とはいえ、図星を隠すにはこの方法しか思いつかなかった。今更やり過ぎたと後悔しても遅い。