私は自分の部屋に籠もっていた。
 何だか……自分の病気のことを深く考え込んでしまっていて。
 あと数ヶ月の命と言われても、また余命が早まるかもしれない。そうしたら、元気でいられるのは一ヶ月くらいなの……?
 そう考えると体中が震える。怖くて怖くてたまらない。体が「まだ生きたい」と叫んでいるもの。
 もちろん運命なら仕方がないこと。受け入れるしかないけれど、でもあまりにも辛いわ。
 机にあるカッターナイフを無意識にとる。背中まである長い長い髪を、ザクッと切り下ろした。

 「姫様、入ってもよろしいですか」

 「りょ、崚、入らないでっ」 

 崚がドアを開けて、私の部屋へ一歩踏み入れた。床に落ちた私の髪の毛を見て、叫び声を上げていた。
 きっと私が勝手に髪を切ったのを見て驚いているのだろうけれど。

 「ひ、ひひ姫様、どうして髪の毛を……」

 「気分転換よ」

 「で、でも、姫様の髪質は美しいですよ。勿体ない気がして」

 「ごめんなさい。でも私はあと数ヶ月の命なのよ。好きなことを……させてください」

 崚は何も言わず、私の部屋を立ち去った。
 でも一人になるといやなことばかり考えてしまう。
 人って幸せなときは少し贅沢なことを考えたりするというけれど、私はその逆。辛いとき、また辛いことを考えてしまうのだわ……。
 やっぱり一人になりたくない。私は……あの森に行くため部屋を飛び出す。

 「姫様、今度はどこへ行かれるのですか!」

 「隣の……妖思村へ行ってくるわ。大丈夫、心配しないで」

 崚は渋々だけれど、頷いてくれた。

 「……全く、姫様はいつも騒がしいですなぁ」

 妖思村へ行っても、私が会いたいひとが見つかるか分からないけれど。
 私はあのお方を、自分の運命の人……だと思っている。その方に会いたい。どうしても会いたいの。
 愛しい、竜司様に。