「つむちゃん、四つ葉のクローバーを一緒に探そう」

 高く高くこの手を伸ばしたって決して届いたりせず、雲で太陽がかくれんぼをしているように、見え隠れしている晴れた広い空の下。
 私たちは公園で家族に見守られながら一緒に遊んでいた。

 ゆいくんは私を誘うように手を引いて、優しく微笑む。
 私たちは幼馴染で、お互いのことを当たり前のようにあだ名で呼び合っていた。
 ゆいくんと遊んだりするこの時間が特別だと感じる。

「四つ葉のクローバー?」

「うん、そうだよ。見つけることができると幸せが訪れるって言われているんだ」

 クローバーはよく道端に生えているから何度も見たことがあったけど、素敵な意味が込められていたりするものがあるなんて初めて知った。幸せが訪れるって魔法のような言葉だと思う。

「本当!? すごい!!」
 私はこの世でまだ、なにも知らなかったものを生まれて初めて発見したように目を輝かせた。

「四つ葉のクローバーには花言葉っていうのがあって、幸せが訪れると同じ意味の”幸運”と他に”約束”て言う意味があるんだ」

「ゆいくんは、すごい、すごい。物知りだね」

「ありがとう」
 小さく私たちにだけ聞こえる声でつぶやいて照れくさそうに少し目を逸らした。

 そうやって楽しくおしゃべりをしながら歩いていくとシロツメクサがたくさん生えているところへたどり着く。
 これから探し始めようと声を掛けようとした瞬間、ふと、ゆいくんが言っていた花言葉であることを思いついた。

「さっき、ゆいくんが言っていた約束っていう花言葉で思いついたことなんだけど、四つ葉のクローバーを先に見つけた方が何でも一つ相手に何かを約束をする内容を決められるっていうのどうかな?」

 ゆいくんは手を顎にのせて思考を巡らせるように考える。

「うんん......実際に見つけられるのか分からないけど、確かにそういうゲームっぽいご褒美みたいなものを先に決めた方が探すのに夢中になりそうだからやってみようか」
「うん! 約束何にしようかな? それじゃあ、四つ葉のクローバー探しを始めよう」
 シロツメクサの草原が広がっている中を二人で同じ場所に固まらないように距離をとりながら、それぞれで探し始めた。

 その場にしゃがみ込んで辺りを見渡したり移動をしてみたりしながら、ひとつひとつ手探りで四つ葉のクローバーであるのか、どんどん確認していく。
 実際に探してみて、ゆいくんよりも先に四つ葉のクローバーを見つけちゃったとそう思ってクローバーをじっくり確認すると三つ葉のクローバーだったりして簡単に見つかることなんてなく、とってもややこしい。

 このままずっと探してみても、結局四つ葉のクローバーを見つけることはなかなかできなかった。

 無意識のうちに「全然見つからないよ」と心の声がぽろりと口からこぼれ落ちてしまう。
 足が疲れてきてしばらくの間しゃがみ込んで探していたせいなのか、足の裏がだんだん痺れてきた。
 このまま、だんだんと痺れが悪化していくのが嫌でゆっくりと立ち上がる。
 すると、少し離れた場所にいたゆいくんは私がいる方へ近づいていきながら「こっちも全然見つからないよ」とそう言葉が帰ってきた。
 さっき、口からこぼれてしまった言葉を小さな声で言ってしまったとそう思っていたのに、意外と大きな声で言っていたことに気がついて、少し恥ずかしい。
 心の中でそう思っていると、生ぬるい風が吹いて髪や花や植物たちが揺れ、太陽が雲に覆われる。
 すると、暑さも少し和らいだ。

「喉も乾いてきたし、一旦休憩にしようか」
 私はすぐに頷き、ゆいくんの提案を受け入れた。