「楽しくなわけないでしょ。
 そうじゃなかったら、
 村瀬さん、
 こんなにも怯えてないでしょ」


「もう、
 本当に何なのよ。
 そんなこと、
 楚良(そら)さんが勝手に決めつけないでよ」


「決めつけなんかじゃない。
 誰が見たって
 そう見えるよ」


「だったら、
 証拠、見せなさいよ」


「証拠?」


「そう、証拠。
 私たちが村瀬さんのことを
 いじめている証拠」


「それは……
 今見た状況が証拠よっ」


「なにそれ、
 そんなの証拠になるわけないじゃない。
 状況を目にしたときの受け取り方は
 人によって違うんだから」


 松浦さんは。
 笑っている、クスクスと。


「だから。
 私たちが『いじめていない』と言ったら、
 それが事実なのよ」


 松浦さんは。
「これで、
 やっと、わかってくれた?
 楚良さん」
 そう言った。

 そのときの。
 松浦さんの表情は。
 勝ち誇っていた、なぜか。