編み物がしたくなったのは、朔哉が彼女からの手編み物に憧れていたからだ。
昨日、仲良く映画を観ていたらクリスマスに手編みマフラーを渡すシーンで、私もああいうの欲しいなー、なんてぼそっと呟いていた。
なら、叶えてあげましょうと決めたものの、できれば内緒にしといて朔哉を驚かせたい。

「色は……朔哉って、黒とか白とか、モノトーンしか着ないよね」

私にはいろいろ着せたがるくせに、いつも朔哉は白シャツに黒パンツ。
別に不満があるわけじゃないけど、たまには他のものも着せてみたい。

「んー、あ、紺だと右目とお揃いでいいかも」

あの、深い深い、海の底のような、朔哉の右目の色が好きだ。
左目の、満月のような金色も好きだけど。

色は紺で、素材はアルパカかウール、かぎ針はそれに合った号数の。
メモには書いてみたけれど、これが無事に届くかは怪しい。

「あとは宜生さんやみんなと、仲良くなる方法だよねー」

よくある手としてはプレゼント大作戦だけど、彼らがなにを喜ぶのかわからない。

「……そうだ」

いつもの彼らを思い浮かべて、ひとつ気づいた。
着物の袖が邪魔だから、よくたすきを掛けている。