「ほんとに心桜は可愛いよね。
食べてしまいたいくらいだよ」

「食べられたら困るよ」

くすくす笑いながら朔哉と回る。
なんだかちょっと、楽しい。

「……こほん」

少し離れたところから咳払いが聞こえて、朔哉の動きがぴたっと止まった。
そのままそーっと私を下に降ろす。

「……お戯れはほどほどにしていただきたい」

「……はい」

いつもはそんなに怒んなくてもいいんじゃないかとか思うけど、これはさすがに宜生さんに叱られても仕方ない。

今日はお昼ごはんを食べた後、もうちょっとだけ仕事があるからー、って朔哉はお社へ行ってしまった。
朔哉のお仕事はもちろん、お願いを叶えることだ。
全部のお願い、叶えてあげるんだって。
でも、現実には全部叶っているわけじゃない。
不思議に思って訊いてみたんだ。

『んー、その人間の願いの強さと、あとは努力によるんだよ』

朔哉が言うには願いが弱いと、いくら叶えてあげてもその本人の元まで届かない。
そして届いても、努力が足りなければ現実にはならない。
やっぱり、神頼みだけでなんとかしてもらおうなんて虫が良すぎるのだ。

「環生さんに手配してもらうの、メモ渡さないと」