「心桜はなに食べたい?」

「んー、オムライス!
……とか無理だもんね」

軽く握った手を口もとに当て、朔哉がおかしそうにくすくすと笑う。

「やっぱり心桜に食事を作ってもらおうかな」

「やっていいならやるよー」

ちょうど食堂に着いて、宜生さんがドアを開けてくれる。

「……でも宜生さんに怒られちゃうね」

「……そうだな」

声をひそめて、小さく朔哉と笑いあい、宜生さんからじろりと睨まれた。


今日のお昼ごはんはいなり寿司とお吸い物、あとは天ぷらだった。

「お稲荷さんだからいなり寿司って安直すぎない?
なぜか油揚げ好きだって思われているからお供え物に多くて、消費できないから仕方ないんだけど」

狐が油揚げ好き、ってただの人間の思い込みらしい。
朔哉曰く、「好きでも嫌いでもない」。
でも朔哉の言っているとおり消費できないほどお供えされるから、ご飯やおやつがいなり寿司の日は多い。

ちなみに、お供え物はちゃんと神様の元へ届く。
どういうシステムなのかはわからないけど。

「でもお稲荷さん、私は好きですよ」

ここに迷い込んだ日に初めて食べたのもそうだったけど。