選ぶようにちょん、ちょんといくつか指でつつくと、するんと爪の上に収まった。

「みんな、あんたがいるせいで、迷惑してるんだからー」

うか様が言っているのは真実だ。
私が屋敷の中を移動すれば、チリンチリンとうるさく鳴る鈴の音に、みんなが慌てふためいて逃げ惑う。
行動範囲が限られていてもこれだ。
屋敷のものは心安まらないだろう。

「……わかってますよ、それくらい」

ぽつりと呟いた瞬間、しまったと気づいたがもう遅い。
うか様の顔が、言葉通りに輝いた。
うん、輝くのだ。
後光が差すって、感じ?
朔哉も嬉しいと輝くけど。
そこはちょっと、面白い。

「わかっているなら、さっさと出ていきなさい?
あ、出ていけ出ていけって言ってたけど、もう行くところがないのか。
じゃあ、さくっと殺してあげる。
痛くないようにしてあげるから心配しないで?」

さらっと、物騒な言葉が出てきて恐ろしい。
でも神様とは本来、そういうものなのだ。
朔哉やうか様は豊穣とか商売繁盛とかの神様だからあれだけど。
祟るからあがめ奉られている神様だって多い。
学問の神様、菅原道真(すがわらのみちざね)公とか。