こんなことをして自分の好きな人の妻に嫌がらせをしたい、うか様が可愛く見えた。
そんなところは見た目と同じで、私と同じ年くらいの女の子だ。

「でも、負けてなんかあげませんよ」

できるだけハイスピードでキーを打つ。
毎日やっているせいか、かなりスピードアップした。
早く終わらせて、うか様を認めさせないと。



「ねーえー。
なんで、出ていかないの?」

今日も今日とて私の目の前でマニキュアを塗りながら、うか様が同じ言葉を繰り返す。

箱はあれから十箱ほど減った。
でもうか様は諦めるということを知らないらしく、毎日毎日、呪詛のように同じ言葉を吐いた。

「……」

ちらっとだけ見て、なにも言わずに作業を続ける。
私としてはうか様と不毛な言いあいをする時間が惜しい。

「ねえってばー。
もしかして、朔哉になにも言うなとか言われた?」

ふーっと、綺麗に塗った爪に息を吹きかけた。
パソコンの向こう側には、ネイルのデコパーツが並んでいる。

「どーでもいいけどー。
さっさっと出ていきなさいよー。
そうすれば、みんな幸せになるんだからー」

彼女が指を軽く振り、デコパーツが宙に浮く。